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【逸品の美学】クリスチャン・ルブタン 美しい裸体の延長に
通勤途中の東京・丸の内。地味めのグレースーツに身を包んだ女性の足元から一瞬、「赤」がチラ見えした。
「おぬし、やるな…」
レッドソールの靴といえばクリスチャン・ルブタン。パリの靴デザイナー、ルブタン氏が1992年に立ち上げたブランドだ。高級靴は数々あれど、優雅さでは他の追随を許さない。折しも今、ニューヨークのファッション工科大学美術館で、彼の革新性に迫る個展が開かれている。
パンプス、サンダル、バレエシューズ…、どの靴底にもアイコンの赤が入る。バーニーズジャパン広報の小池志芳さんが、その理由を教えてくれた。
「昔の映画の出会いのシーンによくあるのですが、ヨーロッパではかつて、女性が男性の気を引くために、ハンカチを道に落としたそうです。その慣習がヒントになったようですね」
真骨頂は、プレーンな黒のパンプスだろう。官能的なラインが映える。履いたとき、靴が主役ではなく、足が美しく見えるよう計算されている。「幼少時から近くに踊り子さんたちがいて、靴のスケッチをしていた」というルブタンは、美しい裸体の延長にある靴を目指してきたという。ヘルムート・ニュートンのヌード写真のような美学、フェティシズムを感じる。
実のところ、幅広&甲高な日本人の典型的な足に、ルブタンはハードルが高い。でも自分を鼓舞するため、靴に足を合わせたい時もある。
現代の女性にとって、靴は男の気を引くためというよりは、セラピーの一種…それって私だけ?(黒沢綾子)

