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【産経抄】3月31日
このニュースのトピックス:相次ぐ値上げ
桜鯛とは、桜の季節の真鯛を指す。産卵をひかえて、身はピンク色に染まり、脂ものっている。刺し身、煮物、しゃぶしゃぶ、なんでもござれだが、なにより骨の味がいいことを、『味覚法楽』(中公文庫)で知った。
▼「中骨に薄く塩をし、約三〇分間ほどして塩で洗い流し、狐色に焼き上げ、擂鉢(すりばち)でごく微細な粉末に擂り上げ、細かい篩(ふるい)で漉(こ)す。蓋茶碗に、この粉末を茶さじ一杯ほど入れ、熱湯を注ぎ、桜の花の塩漬け一輪浮かす」。書き写すだけで、食欲がわいてくる、春の吸い物のできあがり。著者の魚谷常吉は、あの北大路魯山人と並び称された調理人だという。
▼4月から、ガソリンの値段が一時的に下がるものの、そのほかの商品、サービスの値上げラッシュが続きそうだ。特にバター、牛乳、めん類など、食品の価格上昇が、家計に与える影響は大きい。
▼経済アナリストの森永卓郎さんは、ギョーザ騒動のあおりで、価格が下落している冷凍食品や中国産食品をいとわなければ、食費を抑えることは可能だと、夕刊フジにコメントしていた。確かにそれぐらいの覚悟は必要かもしれない。
▼かといって初めから、食の楽しみをあきらめることもなかろう。常吉によれば、桜鯛の骨のように思わぬ食材から、美味、珍味を引き出し、新しい料理を作り上げてきたのは、貧乏人の食通だった。もっとも、食通のなかで数が多いのは、「似而非(えせ)通人」なのだが。
▼「新聞、雑誌、書物の上の研究と、人の口から伝わったのを食いもしないで盛んに吹聴する、料理道の破壊者である」。テレビのグルメ番組を加えると、まさに現代日本の食文化にあてはまる。この本が書かれたのは、二・二六事件が起こった昭和11年だというのに。