ニュース: 生活 RSS feed
【お江戸単身ぐらし】(129)荷風スタイルに学ぶ (1/2ページ)
このニュースのトピックス:美術・芸術
永井荷風といえば、小説『●東綺譚(ぼくとうきたん)』など江戸趣味、花柳界、耽美(たんび)派といったイメージが付きまとい敬遠気味だったが、実は荷風は都会に生きる現代女性を先取りしたシングルライフの達人なのである、という展覧会が開催されていて興味をひかれた。東京・世田谷文学館の「永井荷風のシングル・シンプルライフ」展(4月6日まで)。面白かった。
東京には公私含めて美術館、博物館がわんさかあって、それぞれが趣向を凝らした企画展示をやっているので、ああ面白そうと思ってもつい見逃してしまうのだが、これは世田谷に住む知人が「あれ、いけるよ」と通報してくれ間に合った。情報洪水の現代は、こうした口コミが頼りだ。
都心から約30分。静かな住宅地にある文学館は訪問客も少なく静かだった。タイトルにもあるように、展示は荷風の生活スタイルに照準をあてている。荷風が愛用した砂糖壺、散歩の友だったげたや買い物かご、お気に入りのレストランを再現したテーブルセットやメニュー。どれもいま、雑誌の特集で紹介されても十分通用する品々だ。どうやらかごは荷風こだわりの持ち物らしく、写真などではいろんな種類を持ち歩いている。中にネギを突っ込み、着慣れたツイード姿で歩くかっこよさ。
会場には、荷風が37歳から死の前日まで42年間書き続けた日記『断腸亭日乗(だんちょうていにちじょう)』の原本も展示され、ライフスタイルを解読するきっかけにしている。「曇りて寒き日なり。九時頃目覚めて床の内にて一碗のショコラを啜(すす)り、一片のクロワサンを食し」と書くのは大正8年、40歳を迎える正月元旦。この気ままさ、自由さ、こだわり。