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【明日へのセーフティーネット】あなたの隣で(8)再出発

2008.3.30 08:41
このニュースのトピックス「明日へのセーフティーネット」

◆最後の一線 どう守り培うか

 「生活保護予備軍」といわれる若者たちがいる。ニートやフリーターと呼ばれる人々だ。

 ニートは「就学、就労、職業訓練のいずれも行っていない若者」の意味。総務省などが「15〜34歳の非労働力人口のうち通学、家事を行っていない人」として集計しており、平成17年は64万人。10年前から比べると倍増している。就労による収入はほとんどない。

 厚生労働省などによるフリーターの定義は「15〜34歳の男性または未婚の女性で、パートやアルバイトで働く人、またそう希望する人」。15年の217万人をピークに17年には201万人に減っているものの20年間で4倍。16年にUFJ総合研究所(当時)は正社員の生涯賃金2億1500万円に対し、フリーターは5200万円と試算している。

 こうした人たちの多くは親元で生活しているため、現在は生活困窮者としてはカウントされていないが、このまま年齢を重ねていけば、新たな貧困層が全国各地で出現することになる。

 ある自治体の生活保護のベテランケースワーカーは「ニートやフリーターといわれる人たちのどれくらいが、年金や健康保険料を納められているのかと思うとため息が出ます。彼らだって確実に年は重ねていきますから」と語った。

   ■ ■ ■

 大阪市平野区の鈴木友宏さん(36)は20年近く自宅に引きこもっていた。小、中、高といじめられ続け、休みがちな学生生活を送った。決定的に引きこもるようになったのは高3のとき、年下の友人が突然、自殺してからだ。自殺の原因は今もよくわからない。「体の半分がなくなったような気がした」。そのまま外に出ることができなくなった。気がつけば30代半ばになっていた。

 鈴木さんが自宅から出るようになったきっかけは、アートを通じた社会貢献のあり方などを模索するNPO法人「こえとことばとこころの部屋」(大阪市浪速区)のチラシを手にしたことだった。「ボランティア募集」と書かれていた。

 鈴木さんはそこで元ニートとしての体験談を語れるようになった。趣味の写真の展示会も開いた。NPOという居場所を得て、平成18年から自治体の放課後事業のスタッフとして働き始めた。しかし、現実は甘くはない。19年3月でこの放課後事業自体が終了。仕事探しは、振り出しに戻った。それでも鈴木さんは後戻りはしないつもりだ。「もう引きこもりは嫌。あそこに戻るくらいなら、格好悪くてもじたばた仕事を探し続けたい」

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 オール電化製品の販売や設置工事などで年商約40億円にまで業績を伸ばしている新日本電気サービス(本社、大阪市北区)の社長、都築博志さん(30)は、6年前まで時給750円で働くフリーターだった。都築さんは高校卒業後、運送会社に就職したが3年で退職。その後、3年間フリーターだった。ケーキ製造、カラオケ店、パチンコ店。ボウリング場のバイトでは着ぐるみ姿でチラシを配った。

 生活が変わるきっかけは、父親の借金だった。24歳のとき街の電器店を経営する父から仕事を手伝ってくれと言われた。店は経営不振が続き商工ローンだけで1300万円の借金があった。逃げ場はなくなった。「目の前にあることをがむしゃらにやり、動きながら考えた」。省エネ機器レンタル事業から3年前にオール電化事業に進出、業績は急上昇し、今はアルバイトも含め約500人のスタッフを抱える。

 チラシと借金。それぞれのきっかけで元ニートと元フリーターは新たな人生を踏み出した。2人に共通するのは将来への不安だ。鈴木さんは「今日の食い扶持もないのに、10年先も20年先もあったもんじゃない。今も不安でいっぱい」。都築さんは「フリーター時代は『おれの人生どうなるだろう』というプレッシャーがあった」と打ち明ける。

 将来への前向きな不安は、ささいなきっかけを自立へのステップに変える力になりうるのかもしれない。鈴木さんは「一番苦手だった人間関係が、結局、セーフティーネットになりました。人とのつながりって大切なんだなあと、本当に考えさせられた1年でした」という。

 セーフティーネットは公の制度だけをいうのではない。人とのつながりや、自分自身の気づきがセーフティーネットにもなる。最後の一線をどう守り、培っていくか。2人の経験が、ヒントにならないだろうか。

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