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【明日へのセーフティーネット】あなたの隣で(2) 貧困の連鎖

2008.3.30 08:20
このニュースのトピックス「明日へのセーフティーネット」

◆3世代にわたり生活保護

 生活保護の手続きのため、大阪市内の区役所を訪れた女性を見て、ベテランの女性ケースワーカーはハッとした。子供のころ生活保護を受けていた母子家庭の娘だった。成長した娘は、母親と同じように母子家庭になり、生活保護を受けて生活していた。「親と似たような生活様式になっているんです」。そう語る口からため息が漏れた。

 『国が困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする』。生活保護法は第1条にこう困窮者の保護と自立をうたっている。生活保護法の制定時に厚生省社会援護局保護課長だった小山進次郎氏=故人=は、著書『生活保護の解釈と運用』のなかで、自立に込めた当時の思いをこう書いている。

 『最低生活と共に、自立の助長という目的の中に含めたのは「人をして人たるに値する存在」たらしめるには単にその最低生活を維持させるというだけでは十分ではない。凡(おおよ)そひとはすべてその中に何らかの自主独立の意味において可能性を包蔵している。この内容的可能性を発見し、これを助長育成し、而(しこう)して、その人をしてその能力に相応しい状態において社会生活に適応させることこそ、真の意味において生存権を保障する所以である』

   ■ ■ ■

 しかし、制定以来60年近くが経過した今、3世代にわたって生活保護の受給世帯が全国的に現れ始めている。「貧困の罠」「貧困の連鎖」…。そんな言葉が当たり前のように生活保護の現場で語られる。

 「誰でも努力さえすれば平等にむくわれることを前提にした『努力主義』は幻影です」と平成18年、ある自治体の生活保護受給者を無作為抽出し追跡調査を行った堺市健康福祉局の道中隆理事はそう言い切る。大阪府庁出身の道中理事は、厚生労働省の生活保護指導監督職員なども歴任し、『生活保護制度の基礎知識』などの著書でも知られる専門家だ。

 生活保護の具体的な事例に基づいた追跡調査は、受給者にとって他人には知られたくない個人情報を数多く扱うことから、これまでほとんど行われてこなかった。それでも道中理事が調査を行ったのは、貧困の固定化に強い危機感があったからだ。調査は生活保護受給がかなりの割合で世代をまたいで継承されている実態を裏付けた。

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 調査の対象になった390世帯のうち、過去に育った家庭が受給世帯だったことが判明したのは98世帯(25・1%)。母子世帯の106世帯では実に40・6%に上っていた。記録上は明確に残っていないものの、育成歴などから受給世帯に育った可能性が高い例は多数あり、実際の継承率はさらに高い。

 道中理事も驚いたのが、学歴についての調査結果だった。生活保護受給者のうち、世帯主が中学卒は58・2%、高校中退が14・4%。双方をあわせると70%を超えた。特に母子世帯の高校中退率は27・4%。高校中退の理由として、妊娠、出産の例があったため、10代出産の実態を急遽(きゅうきょ)、追加して調べると、母子家庭106世帯のうち28世帯、26・4%が第1子を10代で出産していた。

 ケースの一つ一つに、ドメスティックバイオレンス(DV)や家庭崩壊など自立を阻む現実が凝縮されていた。

 「低学歴のまま、十分な技能も持てず、10代で母親になった女性の就労自立が難しいことは容易に想像がつきます。『就労自立ができなかったのは、個人の努力欠如』と個人の責任に帰着させるのではなく、社会問題として認識されるべきではないでしょうか」と道中氏は問題提起する。

 むろん、学歴や成育環境が人のすべてではない。高校や大学に行かなくても社会で活躍する人はいる。しかし、現在の生活保護を考えるうえで、「貧困の連鎖」の要因の一つとして育てられ方や育ち方を無視することはできない。

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