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【街物語】(16)ドヤ街のホスピス「きぼうのいえ」 (1/3ページ)
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東京・台東区の通称「山谷」地区。戦後から格安の簡易宿泊所が立ち並ぶようになり、高度成長期には1万5千人の日雇い労働者であふれかえった。男たちの臭気が漂う街は、あまりに不衛生な「宿」を自嘲(じちよう)的に逆さまに読んで「ドヤ街」と呼ばれた。昭和30年代に入ると低賃金や劣悪な労働環境への不満が爆発し、暴動が度々起こった。
現在、山谷という地名はない。だが、そう呼ばれる一画には今でも多くのホームレスや日雇い労働者が暮らす。
山本雅基(まさき)(44)は平成14年春、ドヤ街の一角に、街でたったひとつの在宅型ホスピス「きぼうのいえ」を設立した。32人の入居者のほとんどが元ホームレスや日雇い労働者。「『むぼうのいえ』なんてひやかされたこともあった」という。
みんな、命の期限を宣告されている。元エリート商社マンから前科者まで、過去にはさまざまな事情を抱える個性派揃いだけあって、もめ事も日常茶飯事。素直に介護を受ける老人はなかなかおらず、薬を飲ませるのですら一苦労だ。
「この薬きくんです、飲んでくださいよ」「てめえ、製薬会社からいくらもらってんだ」
「そういわずに、体にいいんですから」「てめえ、おれの臓器をフィリピンに売り飛ばすつもりだろう」
ギャンブルで破滅し、その後は詐欺を繰り返した末期がん患者の永森さん=享年(63)=はスタッフに一切、自分の体を触らせなかった。人を欺く“プロ”だっただけに、だまされたくないというプライドがあったのか、ことあるごとに経理書類の開示を要求した。「いい顔して、裏では金もうけしてるんだろう」。心ない一言に怒鳴り返したこともある。
「やるほどに、看取りの難しさを痛感する」。これまでに58人の旅立ちを看取ってきた。






