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【福島薫一の男前洋品館】究極の着心地を求めて
袖に手を通し上着をまとったとき、首の後ろに少しだけ感じる生地の重み。ほかは体のどこにもストレスを感じず、皮膚のように体に密着して、着用していることさえ忘れさせてくれる。
そして鏡に映すと、今まで見たことがないような自然なシルエットで、体形の欠点を隠し、美しく優雅。肩の力がふっと抜けリラックスさせてくれる、そんな「心揺さぶる着心地」の服に出合って20年ほどになります。
その服はイタリア・ナポリで仕立てられた手縫いの服でした。その着心地を既製服でも、と夢見てリングヂャケットが始めた研究。長い長い旅の始まりでした。
工場の技術者を連れ、ナポリはもとよりイタリア各地の工場を40〜50軒は訪れました。数え切れないほどのスーツを購入し、分解してパターン(型紙)を取ったり、副資材(肩まわりや胸まわりなどで表地の中に入ってる資材)を調べたり。その副資材を求め、イタリア各地を巡り歩きました。
ナポリの手縫いの着心地の服を、日本でいかにしてミシンで縫い上げるか。答えを求める旅はいまだに道半ばですが、おぼろげながら見えてきたことがあります。
最も大事なのは、やはり本物を知り、本物に近づこうとする情熱でしょう。イタリア人にできて、日本人にできないことはないという強い確信。
そして、体の隅々の動きまで計算しつくした型紙。決して大きくはないが、体の動きを計算した各部のゆとりのとりかたです。
次に、優れた洋服を裏から支える副資材のクオリティー。肩に入っている肩パット、胸の中に入っている毛芯(けじん)、裏地などを含めて、イタリアの仕立て服が採用する副資材は厚みがあって服に柔らかい立体感を生み、体の動きの理にかなっているものばかりです。縫い糸まで輸入した次第。
最後に、手縫い感覚です。各部に時間をゆっくりとかけ、コストの許す限り手作業を多く取り入れ、ミシンのスピードも最も遅くして縫製しています。
しかし、道はまだはるかです。試着してもらって肩から力が抜け、笑顔で「楽だねこの服!」。
思わず、そのひと言が出る究極の着心地まで。(リングヂャケット社長)


