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【もてなしの心】高知の老舗中の老舗 (1/2ページ)
高知市に約180軒あるホテル・旅館の中でも、老舗中の老舗旅館が、同市上町の「城西館(じょうせいかん)」である。先代の大女将、故・藤本楠子さんは、宿毛市を地盤とした吉田茂元首相に「いくらエチケットを知らないからといって、カメラマンにコップの水をかけてはいけません」と諭すなど、土佐の女性「はちきん」らしい肝っ玉と優しさを兼ね備えた伝説の女将。後を継ぐ現在の大女将、佐和子さん(79)と、女将の浩美さん(51)も、皇族のご定宿という伝統を守りつつ、さりげなく、温かいもてなしで、多くの人に旅の思い出を贈り続けている。
(高知支局 絹田信幸)
JR高知駅の南にあるはりまや橋から、通称・電車通りと呼ばれる国道33号を西へ約1・5キロ。城西館や「坂本龍馬誕生地」の碑はここにある。鉄道ファンに人気の路面電車「土電(とでん)」(土佐電気鉄道)にゴトンゴトンと揺られるのも一興。郷愁を覚える人も多いという。
城西館本館は7階建て、別館は8階建てで、最上階には、35万都市の夜景や星空が堪能できる自慢の展望露天風呂。食事は、4分野の料理長が、土佐名物の鰹(かつお)のたたき、どろめ(しらす)、みょうがなど四季折々の山海の幸を盛り合わせた皿鉢(さわち)料理や、本場並みのフランス料理を用意。淡麗辛口の地酒がすすめば、英傑・龍馬の往時がしのばれる。
楠子さんは、明治41年生まれ。数軒の旅館で女中頭を務めた後、故・松下幸之助氏へのてきぱきとした対応ぶりなどが認められ、戦後、城西館の支配人に指名される。戦後すぐの吉田首相の服は、袖の裏地がボロボロに破れており、夜なべ仕事でそっと繕ったというエピソードも残る。
心を込めた接客から、吉田首相をはじめ孫の麻生太郎元外相など、うわさを聞きつけた政財界人らが宿泊。昭和30年代以降は、皇族のご定宿になり、司馬遼太郎など各界各層の名士や、二代、三代にわたって利用する宿泊客も多い。


