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【街物語】(13)路上の天使、川嶋あい 渋谷で残した足跡 (1/3ページ)
たくさんの人が行き交う東京・渋谷のスクランブル交差点。大型ビジョンを見上げると、透明な声で切々と歌い上げる16歳の少女の姿が映し出されていた。平成15年春のことだ。
《いつの間にか すきま空いた心が満たされてく ふとした瞬間のさりげないしぐさ》
流れていた曲は「I WiSH」というユニット名で出した「明日への扉」。そのビジョン下の路上では、1人の女子高生がキーボードの弾き語りを披露していた。彼女が「I WISH」であることに通行人は気づかなかった。
「不思議な気持ちでしたね。同じ自分なのに…」。川嶋あい(22)にとって忘れられなシーンだ。
その2年前、高校進学と同時に単身福岡から上京。芸能事務所に登録したが、仕事はなく、やがて解雇された。挫折と絶望。もやもやとした気持ちをはき出し、歌詞を紡いでいた。
《目を閉じたらきっとどんな未来もかなうのに 目を開けた現実にいつも何もできない私なの》
そんなある日、渋谷のハチ公前で歌う青年を見た。「私もやってみよう」。翌日、四ツ谷駅近くの路上でマイクを握った。歌ったのは「オリビアを聴きながら」。だが声がかすれて震える。誰も立ち止まらない。恥ずかしい、怖い。一目散に立ち去った。
故郷の母に励まされ続けてはみたが、逃げ腰のまま。やっと歌っても誰も聞いてくれない。情けない自分を断ち切るようにある日、決断した。「1000回やり抜く。やればきっとスカウトされる。だめなら歌手はあきらめる」。一度決めたら、恥ずかしさは吹っ飛んだ。舞台は渋谷を選んだ。
渋谷駅前のスクランブル交差点を1回の青信号で渡る人の数は多いときで3000人にも上る。「エネルギーと生命力にあふれているけど、表面では分からない寂しさや孤独を抱えた街」。そんなふうに感じながら、道行く人に歌いかけた。「自分との戦い」の日々の中には「人との出会い」もあった。















