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【街物語】(12)古都・鎌倉を駆ける 人力車をひいて25年 (1/3ページ)
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左手を前、右手を脇に添え、かじ棒をすっと引き上げる。目の位置が30センチほど高くなるだけで、座席から見る風景の印象が一変する。
「それでは参ります」
滑るように人力車が走り始める。走行中、座席が上下に揺れることは、まったくといっていいほどない。車を引く青木登(59)の腰の位置がぴたっと決まっているからだ。
「かじ棒が地面と平行に移動しないと揺れてしまう。何年もやって体で覚えていく以外にありません」
鎌倉の中心・鶴岡八幡宮からまっすぐ海に向かってのびる若宮大路、観光客でにぎわう小町通り、その奥にたたずむ小さな路地。古都・鎌倉の歴史と文化から通り過ぎたばかりのレストランの最新グルメ情報まで、さりげなく紹介しながら人力車は進む。青木にとってはこの四半世紀、走り続けてきた道だ。
鎌倉の観光人力車の草分けである「有風亭」青木登の平成20年は二重の意味で節目の年となる。サラリーマン生活に見切りをつけ、鎌倉で人力車を引き始めて今年で25年。3月の下旬には還暦の誕生日を迎える。
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いまでこそ鎌倉は人力車であふれているが、青木が昭和59年の元日に開業するまで、鎌倉どころか、東日本を見渡しても観光人力車などなかった。前年の夏、雑誌で読んだ記事を頼りに岐阜県高山市、愛知県犬山市、岡山県倉敷市の先輩業者の操業ぶりを見て回り、人力車一台を購入して10月から北鎌倉の円覚寺前に待機した。
「幼稚園に子供を送り迎えするお母さんたちに声をかけ、乗ってもらいました。教えてくれる人などいません。重い人、軽い人、走って覚えるしかなかった。12月31日までは自分で決めた研修期間なので、料金はいただきませんでした」
サラリーマン時代から鎌倉が好きでしばしば遊びに来た。
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