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【もてなしの心】ブログも続ける奈良・若草山麓の「むさし野」女将 (1/2ページ)
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奈良・若草山(奈良市)のふもとで、世界遺産の東大寺や春日山原始林に囲まれた最高の立地条件にある古都の宿「むさし野」。文豪にも愛された老舗を祖母の代に買い取り、孫の山下育代さん(50)が3代目女将を継承。格式ある伝統や、恵まれた環境に勝るとも劣らない最高のもてなしを、日々宿泊客に提供し続けている。
(奈良支局 土塚英樹)
むさし野は、少なくとも江戸時代末期には茶屋として営業していた。当時の奈良奉行が一服したという日記の記録もある。文豪・谷崎潤一郎の『吉野葛』にもその名が登場。終戦直後には、進駐軍の保養所として、また大阪経済界の重要な会議場としても使われた。
奈良県下市町在住の山下さんの祖母が昭和20年代、経営不振で売りに出されていたむさし野を買い取ったのが、一族での経営の始まりだ。
「全くのずぶの素人だった」(山下さん)という祖母が、女将でありながら着物姿で洗い物もする姿を、幼いころから目の当たりにしてきた。
3姉妹の長女として育ったが、一時期は宿を継ぐのを敬遠し、芸術系の大学に進学。卒業後も洋裁の専門学校に通ったが、体の弱い2代目女将の母を思い、20代半ばで3代目を継いだ。
父からは「この宿をつぶそうが大きくしようが、好きにすればいい」と言われた。ただ、最初にフロント係を任されたときには「厨房や客室など)裏のことも分かるようになれ」と気配りを教えてくれた。
接客係を任されると、長年勤めていた接客係の従業員たちが「伝統に甘んじて接客をないがしろにしている」と感じ、全員解雇。自ら面接し、新しい接客係を採用した。
「慣れが出て、お客さまを見た目で判断するのが一番恐ろしい。常に謙虚な気持ちでなくては」。自分に言い聞かせる教訓でもある。


