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【産経抄】1月27日
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何かの折に小学校2年生のときの作文集を広げてみると、先生の後書きに、これは「子ども達の心の貯金箱」とあった。そのころの自分に出会うことで、生きる上での心の糧になるに違いない。そんな先生の思いが伝わり、胸が熱くなった。
▼川崎市の小学校で14年余り前、児童たちが自分で書いた手紙を風船に付け空へ飛ばした。開校120周年記念だったというが、これも「心の貯金箱」の意味があったのではないだろうか。返事がきたり、手紙と「再会」できたりすれば、心豊かになっていくだろうからである。
▼むろん、運良く誰かに拾われていればの話だった。ところが、当時1年生だった白髭奈津実さん(21)の手紙が今になって突然、返ってきた。それも深さ1000メートルの海底にいたカレイにくっついていて、カレイともども漁船に「水揚げ」されたのだという。
▼カレイが運んでくれたとはまるでおとぎ話のようである。だが何年も海中にあった手紙がなぜ判読可能で残っていたのだろう。そんなことを考えるとミステリー小説のようでもある。ずっと陸にあったのが、何かの拍子に海に流されたといった推測も成り立つようだ。
▼そんな詮索(せんさく)はともかく、白髭さんは拾ってくれた漁船の船主に「ゴミと思って捨てずにいただいて」とお礼を述べた。何ともうれしそうだった。カレイの煮付けが好物だそうで「これからはカレイを食べるのがかわいそうになっちゃう」とユーモアたっぷりに話していた。
▼「ひろったかたは、おへんじをください」とかわいらしく手紙を書いた小学1年生の少女も、礼儀正しく表現力豊かな大学生に成長していた。これからも、幸運な「心の貯金箱」を大事にしていってほしい。外野席ながら、そう願った。