ニュース: 生活 RSS feed
【いきいき】額装職人・向井理依子さん(34) 作品の良さ最大限に生かす
絵画や写真、版画などの魅力をより引き立たせるために、作品の周囲に施す「額装(がくそう)」と呼ばれる装飾を専門に作り続けている。
額装は個々の作品に合わせて作るから、どれも個性的だ。作品と額縁の間のマットと呼ばれる部分を装飾するのが一般的だが、平面的な装飾だけでなく、立体的なオブジェのようなものもある。日本ではなじみの薄い分野だが、フランスでは額装店が数多くあり、誰もが気軽にインテリアの一つとして楽しんでいるという。
「赤ちゃんのファーストシューズに立体的な額装を施して飾っている人もいます。額の大きさに合わせて絵画を入れるのとは発想が異なり、物があり、それに合わせて装飾するのが額装。トータルで考えてデザインするものなんです」
だから、額装を施した絵や写真はすべてオリジナルな味わいがあり、作品だけを入れ替えることはできない。そんなところが魅力でもある。
◇
大学では理系の道に進んだが、アートにも興味があった。「絵をサポートする仕事がしたい」と考え、調べていくうちに額装の世界にたどり着いた。本格的に学ぶため、28歳の時に渡仏。額装店で修業しながら職業訓練校と額装の専門学校に通い、約3年後にフランス額装の国家資格である職業適性証を取得する試験に合格した。
フランスでは、多くの人が自分が気に入った絵や写真などを手に「ちょっと額装してください」と来店するという。
「その写真などを見て、額装をデザインし、施していきます。持ってこられた作品を第一に考えて作ります。額装はあくまでも脇役。作品を尊重してより引き立たせることが、額装の目的ですから」
◇
今は大阪の額装会社に勤める傍ら、兵庫県西宮市にアトリエを構え、額装の注文を受け付けたり、教室を開いたりしている。
額装の作り方はまず厚紙を作品に合わせてカットし、そのカット面に布や色紙を巻き、さらにマットを重ねる。次に表面に水彩で色を塗ったり、デザインを描く。最後に木製などの縁をはめ込んで完成。
額装作りは作品の良さを際立たせるための技術に加えて、芸術的なセンスも必要。古い版画などの額装の場合は、故意に汚れた雰囲気を出すことも基本の技術だとか。作品の大きさや形状も一つずつ違い、デザインや色合いの発想は限りなく広がり、「本当に奥深い」という。
日本でも額装のすばらしさが認められてほしいと願っている。「みなさんも、結婚式のウエルカムボードなど記念の品を額装してみませんか。楽しい思い出がさらに引き立ちますよ」(武部由香里)
◇
【プロフィル】向井理依子
むかい・りえこ 昭和48年、兵庫県生まれ。京都産業大学工学部を卒業後、システムエンジニア会社に入社。平成13年に退社し、額装の勉強のため渡仏。額装学校で勉強するとともに、リヨンやパリの額装店で研修・勤務。16年、フランスの額装の国家資格(CAP Encadrement)を取得した。帰国後、大阪市の額装会社に勤務し、個人で作品展も開催している。HPはhttp://hccweb1.bai.ne.jp/encadrement/


