ニュース: 生活 RSS feed
【産経抄】1月14日
このニュースのトピックス:産経抄
全国大会でもない箱根駅伝になぜあれほど人気が集まるのか。土曜日に行われた土光杯全日本学生弁論大会で、国士舘大学体育学部3年の山中貴弘さんの弁論を聞いて、疑問が氷解した。
▼1年生のときから駅伝のメンバーだった山中さんは、走ることの苦しみ、喜びを語ってこう結ぶ。「今年もたすきをつなぐことができました」。坂の上り下りの過酷さ、抜きつ抜かれつの醍醐(だいご)味もさることながら、何としてでもたすきを次の走者につなぐ、その必死の思いが人の胸を熱くするのだろう。
▼不登校の体験をもとに弁論を展開したのは、日本大学法学部3年の野中哲郎さんだ。中学1年のころから、ストレス性の過敏性大腸症候群による下痢や腹痛に苦しみ、いじめも受けた。今の自分があるのは、自宅を何度も訪ねてくれた担任の先生や、ありのままの自分を受け入れてくれた高校、大学の友人のおかげだという。教育行政の仕事に就くことをめざしているのは、「次は私が人を助ける番だと思っている」からだ。
▼最優秀の土光杯を獲得した京都大学経済学部4年の前野裕香さんは、イギリス留学中に、英語、母国語両方の読み書きができない移民と知り合い衝撃を受けた。幼いころ、母親に毎日30冊の絵本を読み聞かせてもらった自分は、なんと恵まれていたことか。
▼前野さんは、親から手渡された「言葉の力」を生かして、春には経済誌の記者として社会へ飛び出す。祖先から受け継いだ文化を次の世代に伝える。他人から受けた親切を別の人に返す。
▼人の世は、そんなたすきをつなぐ営みでできている。きょう成人式を迎えるみなさんは、人生の中継地点をスタートしたばかり。その肩には、どんなたすきがかかっていますか。