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【断 中条省平】楽しみが台無し
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年明けのお屠蘇(とそ)気分に誘われて、年末に買ったまま放りだしてあった『ミシュランガイド東京2008』を手に取りました。本を開いて、びっくり! そこに現れたのは、私の知る「ミシュラン・ルージュ」(通称、赤ミシュラン)とはまったく別物だったからです。
全ページ、まるで週刊誌の巻末グラビアみたいな写真が掲載され、いっちゃ悪いがその写真に切れがなく、何より写植みたいな活字が安っぽい。
フランスに長めの旅行をしたり、そこで暮らしたりした人の多くが赤ミシュランのお世話になったはずですが、あの重厚かつ機能的な造本と、禁欲的なまでの紙面構成はそこにはありません。
聞けば写真付きは最近の「変節」らしいのですが、それにしてもこんなページ作りをして平気な美的センスの持ち主が食の美学をうんぬんする資格があるのでしょうか。
そもそもミシュランはタイヤ会社で、地方のうまそうなレストランを紹介して自動車旅行をはやらせ、タイヤをどんどん売るためにこのガイドを始めました。だからこそ、三つ星の定義が、そのために「旅行する価値あり」で、二つ星は「遠回りする価値あり」だったのです。そこには、遠い未知の土地と食事を想像する快楽がありました。それがお手軽な写真で露骨に紹介されてしまっては、楽しみが台無しです。
今回の騒ぎでもうひとつ嫌だったのは、東京の星付きが150店で、パリの64店を超えたと浮かれていたことです。そこには、あの見苦しいバブルの時代を連想させる日本人の「ぷちナショナリズム」が見られたばかりか、そのナショナリズムを外国のお墨付きで満足させてもらっているところに、さらなる情けなさを感じた次第です。(学習院大学教授)
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