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【産経抄】1月7日

2008.1.7 02:40
このニュースのトピックスノーベル賞

 家に入ると、少年の目に涙が浮かんできた。小学校では常に首席を通し、周囲はもちろん誰より本人が自信満々だったから、中学受験に失敗したショックは大きかった。母親は、息子の心の傷を癒やすために、少し離れた場所にある小学校で、浪人生活を送らせる決意をする。

 ▼母親には不合格に心当たりがあった。吃音(きつおん)のせいで、面接試験が不出来だったのではないか。幼いころ、少年はいたずらっ子に窓の外へ突き飛ばされ、しばらく口がきけなくなったことがある。それが吃音の原因だと信じた母は、すぐ病院に連れていかなかった自分を責め続けた。

 ▼入試シーズンが本番を迎えつつある。なかでも中学受験は、首都圏で5人に1人が参加する大激戦なんだそうだ。体調を崩してないか。志望校の選択はこれでいいのか。まだ11歳か12歳にすぎないわが子が、深夜まで勉強する姿に、やきもきする親御さんの姿が目に浮かぶ。

 ▼書店の受験コーナーには、親の体験記が並び、昨年は有名私立中学に合格した生徒の自宅をモデルにした、「頭の良くなる家」が売り出されて話題になった。「家族の総力戦」は格差社会の徒花(あだばな)かもしれない。あおるつもりはないが、否定もしない。

 ▼見たいテレビを我慢して、机に向かった日々がもうすぐ終わる。たとえどんな結果に終わろうと、その経験を人生のどこかで生かしてほしい、と子供たちに願うばかりだ。

 ▼くだんの少年は翌年進んだ中学で、充実した学園生活を送り、東大に進む。やがてアメリカに渡り、昭和48年にノーベル物理学賞を受賞する。その人、江崎玲於奈さんは、浪人時代を振り返り、「自主自立の精神が養われた」と述懐する。ノーベル賞は「母に負うところ大」とも。

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