ニュース: 生活 RSS feed
【街物語】(5)「ダムに沈む村」 群馬県・川原湯温泉 (1/3ページ)
瓦屋根の小さな駅舎を通る乗客は1日平均46人。源頼朝が発見したと伝えられる群馬県長野原町の川原湯温泉は、雪を被った吾妻渓谷を見下ろして、ひっそりたたずんでいた。
春には若葉が日を受けてキラキラと輝き、秋になれば一面が赤や黄に染まる。若山牧水ら文人に愛され、「関東の耶馬渓」と称される渓谷の間を、深緑色の水をたたえた吾妻川が静かに流れていく。
カモシカやムササビも住む田舎の小さな温泉街は、55年もの長きにわたってダム建設に揺れ続けてきた。そして近く、関東1都5県の水がめとなる「八ツ場(やんば)ダム」の湖底に沈んでしまう。
民宿「雷(らい)五郎」の女将、豊田政子(71)は3年前、水没する住民の気持ちを少しでもわかってもらいたいと、詩集「ダムに沈む村」(上毛新聞社)を出した。
《私の生まれたダムに沈む村は 美しい渓谷とひなびた小さな温泉場 六月になると仏法僧は鳴き 山には大好きな山野草が咲きみだれる》(ダムに沈む村)
「原爆が落ちた広島だって、50年たち復興した。でもダムになるということは、その土地が消滅するということ。地球上から永遠に消えるということ」
半世紀以上もの年月、何をしていても、「ダム」の2文字が頭を離れることはない。「畑を耕していても、やがて沈んでしまうと思う。家を直そうとしても、いずれ解体されるなら雨漏りの補修くらいでいいと思う」
「口べただから」と30年ほど前から、思いを詩に託してきた。詩集に収録された26編の作品には、ふるさとへの深い愛情と、消えゆく無念さが織り込まれている。
《十七歳の暑い夏の日 学校から帰ると上がり框(かまち)で お祖父さんから「ダム」という言葉を初めて聞いた ダムって家もすべてのものが沈んでしまう 恐ろしいことだと ぼんやりわかった》(暑い夏の日)













