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【産経抄】1月3日
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宮崎駿監督の新作映画『崖の上のポニョ』の制作が、今夏の公開に向けて進んでいる。瀬戸内海に面した町に滞在して、身もだえせんばかりに構想を練る宮崎さんの姿を、ドキュメンタリー番組で見たことがある。
▼海を舞台に、アニメーションの原点に戻り、徹底的に手描きにこだわる作品になるという。寄せては返す波の動きが、どのように表現されるのか、宮崎ファンとして胸が躍る。どれほど困難を極める仕事なのかは、素人でも察しがつくからだ。
▼古今東西、大勢の芸術家が波の描写に挑んできた。もっとも成功した作品のひとつとして、葛飾北斎が70代で手がけた「冨嶽三十六景・神奈川沖浪裏」が挙げられる。3艘(そう)の船に襲いかからんばかりの大波の向こうで、我関せずとばかりに富士山が鎮座している。
▼フランスの作曲家、ドビュッシーに交響詩「海」の着想を与え、画家ゴッホが弟にあてた手紙で何度も触れたことはよく知られている。きのう、両国の「江戸東京博物館」で開かれている「北斎」に行ってきた。この絵に限らず北斎の名声が、江戸時代に遠く欧州まで届いていたことがよくわかった。
▼当時長崎の出島に滞在していたオランダ人が、北斎に注文し、祖国に持ち帰った肉筆風俗画の展示が目新しい。なかには出来上がってから、半額に値切るひどい客もいた。受け取るはずの金をすでに借金の支払いにあてるほど、貧乏に苦しんでいた北斎だが、不正を許せず、追い返したそうだ。
▼今や世界の巨匠となった宮崎監督と北斎は、何も国際市場を意識して仕事をしたわけではない。ただ全身全霊を傾けた作品が、知らぬ間に国境を越えて、絶賛されただけのこと。こんな日本人の出現を、今年も待ち望みたい。