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【産経抄】1月1日
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新年の季語のひとつに「嫁が君」がある。今年の干支(えと)のネズミのこと。正月三が日に限って、めでたい言葉に言い換える、いわゆる忌み言葉だ。三が日は嫁も掃除から解放されるので、ネズミに家の中を汚してもらいたくない。そんな願いも込められている、との解釈もある。
▼人間とは長い付き合いだが、なんともやっかいな小動物だ。穀物を食い荒らす。家の壁に穴を開ける。病原菌をまき散らす。その被害は今も増加傾向にあるという。特に使わない部屋があり、食べ物の買い置きも多い、お年寄りの住まいが狙われる。
▼その一方で、能力の高さに、人が一目置いてきたことも事実だ。地震発生の前に集団で移動する異変は、よく知られている。アフリカでは、鋭い嗅覚(きゅうかく)で火薬をかぎ分ける「地雷探知ネズミ」が活躍しているそうだ。
▼昨年、ヒトの皮膚細胞からあらゆる細胞に分化できる万能細胞をつくることに成功した、山中伸弥京都大学教授の研究を支えているのも、実験用のマウスたちだ。約50年前、アメリカの心理学者、カルホーン博士がハツカネズミで行った有名な実験がある。
▼箱のなかのネズミに、餌と水、巣作りに必要な材料を好きなだけ与えてやる。当然、どんどん繁殖するが、密度が高まるにつれ、けんかが絶えなくなり、そのうち争う元気もなくしていく。雌は巣作りや育児を放棄して、全滅に向かう。
▼少子化によって人口減少社会に入った日本では、同時に都市への集中化も進んでいる。最近、混雑した電車の中で多発しているトラブルと、ネズミの異常行動はどこかでつながっていないだろうか。人類滅亡後の地球の支配者はネズミ、との説もある。そうならないために、ネズミから学ぶことはたくさんありそうだ。