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【話の肖像画】50年後の「黒部の太陽」(5)裕次郎のモデル 笹島信義さん
■60年のトンネル人生
≪黒部ダムの最難関工事となった破砕帯を突破して2日でちょうど50年。10月26日、当時の作業員といまの社員を引き連れて黒部ダムの現場を訪れる、1泊2日の「くろよん破砕帯慰霊祭・研修会」を開催した≫
−−50年ぶりの現場は?
笹島 言葉がでませんでした。人間業ではないというか、世の中にないような危険な仕事、難しい仕事をやった場所。当時、携わって生きている人が他の7人のうち5人、1人は酸素ボンベを携行してきてくれました。
−−一番の目的は慰霊?
笹島 10人、20人死んでもおかしくなかった破砕帯で犠牲者が出なかったのに、その後の一連の工事で、笹島班から23人もの犠牲者を出してしまいました。観光だったら、とても行けません。
−−好んで使われる「二根三惚(にこんさんぼ)れ」の精神とは
笹島 熊谷組の下請け同士で使っていた言葉です。二根とは根気と根性。三惚れとは(仕事先の)全国の土地土地に惚れ、仕事に惚れ、(留守がちだけに)女房に惚れろということ。それがいい仕事をする秘訣(ひけつ)だという意味です。
−−怒らない?
笹島 (貫通させようと気持ちがはやる)作業員を抑えるのに必死だったのは、後にも先にも黒部だけ。でも、いつもは猛将タイプですよ。説明してると面倒くさくなってね。灰皿が先に飛ぶことがよくあった。今でも、すぐ辞めろと言ってしまうが、それで辞めたやつはいません。
−−リーダーの資質とは
笹島 百怒鳴れば愛情は百十持って、弱い部分を救って助けてやらなきゃ。灰皿の投げっぱなしはだめだ。でも今の時代は、怒りもないし、愛情もない。部下に嫌われたくないのが先に立つんじゃねえかな。
−−自分の会社の社長を交代させた
笹島 息子から孫に。経営者としては甘くあってはダメです。会社っていうのは自分のものではない。私はこの会社の番頭だから、私情をはさんじゃいけないんです。
≪糖尿病歴35年。1日3回インシュリンを打つが、日曜祝日以外は、毎日午前中に出社。神棚に手を合わせてから、各地の工事中のトンネルの進捗(しんちょく)状況の報告を受ける≫
−−60年以上前、この仕事を始めたときは「トンネルが大嫌いだった」のに
笹島 そうですね、それが仕事も趣味もトンネルに。本当はこんなところ(本社)は似合わない。現場が好きなんです。体力? 気力があれば後からついてくるっちゃ(笑い)。
(高見修次)
=おわり