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【産経抄】10月30日
このニュースのトピックス:論争「朝日vs産経」
終戦直後の政治や社会を風刺した名コラムとして知られる「ブラリひょうたん」で、筆者の高田保はしばしば同じ大磯に住む時の首相、吉田茂を俎上(そじょう)に載せた。ある日のコラムは、訪ねてきた知り合いの代議士から贈られた本の話で始まる。
▼手にとって題字の達筆なことに感心していると、果たして吉田の筆によるものだった。「文は人なりというが、墨跡もまたその人を語るものである」。吉田をいったんは持ち上げておき、それほどの「有徳」が何の力にもなっていない政治を嘆く。つまりは吉田批判になっていた。
▼このコラム集を愛読書のひとつに挙げたのが、きのう訃報(ふほう)が伝えられた藤波孝生元官房長官だ(『政治家の本棚』朝日新聞社)。「控えめに 生くる幸せ 根深汁(ねぶかじる)」の句で知られる俳人でもあった。東京と伊勢市の自宅は、どちらも本であふれていたという。
▼「財産は本だけ」と語っていた「文人政治家」が、なぜリクルート事件にからめ捕られたのか、いまだ事件の闇は深い。ともあれ、高田が指摘し、藤波氏の実例が示す通り、文人であることと、優れたリーダーであることは、必ずしも一致しない。
▼それにしてもだ。守屋武昌前防衛事務次官(63)の証人喚問には、ため息が出た。200回以上のゴルフ接待に加えて、韓国クラブに焼き肉屋に賭けマージャンときた。これだけ遊び歩いていれば、本を読む時間はあるまい。
▼それどころか、日本の安全保障について、じっくり考える機会さえなかったのではないか。接待の見返りがあったのか、あるいは倫理上の問題以前に、こんな人物が、「大物次官」として、防衛省に君臨していた事実に戦慄(せんりつ)を覚える。高田の言葉を借りれば、「末世というのはこれかもしれぬ」。