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【産経抄】10月25日
このニュースのトピックス:守屋前防衛次官問題
昭和初期の激動のなか、金解禁を成し遂げ、ともに凶弾に倒れた浜口雄幸と井上準之助の生涯を描いた『男子の本懐』にあるエピソードだ。日本銀行のエリートコースからはずれて、ニューヨークに飛ばされ腐っていた井上が、ゴルフを知ることで生気を取り戻す。
▼「『之レアリテ万事忘レテ日ガ立チ』『自分ノ命ノ親ト言フ可キ也』とまで有り難がったゴルフだが、腕前は相変らずさほどではない」。作者の城山三郎さんは、苦笑いしながら、書いたのではなかろうか。
▼城山さんも、重度の不眠症に苦しんでいた39歳のとき、医者に勧められてしぶしぶ始めたゴルフのおかげで、「命拾い」をした。腕前の方はさだかではないが、少なくともスイングは超がつくぐらい個性的だったらしい。練習場で見学していた夫人が、「あなたのフォームが一人だけ変よ」とわざわざ言いに来たぐらいだ。
▼もっとも、城山さんにとってスコアは二の次、人との出会いが何よりの楽しみだった。文壇の付き合いはもとより、歴代首相や大企業のトップと交わり、時に本名で入っているクラブで、初対面の人の話に耳を傾けた。
▼『城山三郎ゴルフの時間』(ゴルフダイジェスト新書)のなかで、ゴルフとは社会的な地位や名声から離れて、「無所属の時間」を持つことだといっている。とすれば、守屋武昌・前防衛事務次官が出入りの商社幹部から100回以上も受けていた接待は、ゴルフへの冒涜(ぼうとく)にほかならない。
▼まして、毎日のように殴られ、芋の葉やつるしか口にできないというのに、士官たちは天ぷらをたらふく食べていた海軍生活の不条理が、城山文学の出発点である。自衛隊文官トップのおごりに、天上で怒り心頭に発しているに違いない。