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【産経抄】10月8日

2007.10.8 02:59
このニュースのトピックスノーベル賞

 「胸は官能のよろこび」でふくらみ、「その精気のなかをころげまわりたい」。バニラは、メキシコ原産のラン科の植物のひとつだ。花ではなく、成熟した実が放つ芳香に、西欧人が出合った瞬間を、フランスの作家、ランブールが『ヴァニラの木』のなかで描いている。

 ▼その香りの成分を牛の糞(ふん)から抽出する方法を開発したとして、今年のイグ・ノーベル賞の化学賞に、国立国際医療センター研究所の元研究員、山本麻由さん(26)が選ばれた。1991年に米ハーバード大系のユーモア科学誌が創設したこの賞は「まず笑わせ、そして考えさせてくれた研究」に贈られる。これまで日本人は、カラオケや「たまごっち」などでも受賞してきた。

 ▼スリランカの「象の孤児院」で保護されている象の糞から、和紙に近い手触りの紙を作ることを思いついた日本人青年の話を聞いたことがある。牛の糞を発酵させて作ったメタンガスは、すでに各地で発電などに利用されている。

 ▼それらに比べても、アイスクリームはじめ、お菓子やリキュールに欠かせないバニラと牛の糞の取り合わせは、確かに「笑わせてくれる」。ただ日本であまり話題にならなかった研究がもてはやされた理由は、ユーモア感覚の違いだけではなさそうだ。

 ▼コショウなどの香料の風味は、何千年も前から人々を引きつけてきた。コロンブスが新大陸を発見するきっかけにもなる。19世紀半ばまで他地域への移植が難しく、今でも高価なバニラも、その長い歴史に連なっている。

 ▼長い航海もいとわず、時にはおびただしい血を流してまで求めた宝物が、実は身の回りにころがっているもののなかにあった。その事実が深く「考えさせてくれた」からでは、あるまいか。

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