ライフ【文化部発】芥川賞・田中慎弥さん「当然」発言の裏を読む2012.1.26 08:00

  • [PR]

ライフ

  • メッセ
  • 印刷

【文化部発】
芥川賞・田中慎弥さん「当然」発言の裏を読む

2012.1.26 08:00 文学

 口に出しにくいことをさらりと言って、閉塞(へいそく)した時代に、尖(とが)ったキャラが「面白い」とウケた。5度目の候補で、円城塔さん(39)とともに第146回芥川賞に決まった田中慎弥さん(39)のことだ。

 「2人とも実力者で最年少でもない。正直あまり騒がれないだろう」。そんな出版関係者の予測は、「ばかみたいな作品ばかり」と発言した芥川賞選考委員の石原慎太郎都知事(79)を意識した8分間の“不機嫌会見”で、あっさり覆された。1年前の受賞者、西村賢太さん(44)がユーモラスな受け答えで脚光を浴びたのと似た構図だ。

 17日夜、受賞決定後に東京都内で開かれた会見は、石原都知事との対決が強調されているが、ここでは米のアカデミー賞女優を引き合いに語った「(受賞は)当然」という感想に注目したい。事前に用意した節がある会見冒頭の言葉であり、より実感がこもっていると感じたからだ。

 田中さんはデビューから3年で純文学系の新人に与えられる三島由紀夫賞を受賞した。同時に、短編小説の年間ベスト1に贈られる川端康成文学賞も受けている。同賞は中堅やベテランに与えられることが多く、35歳での受賞は当時歴代最年少だった。現在の芥川賞選考委員にも受賞者は少ない。「これだけ力量のある新人はめったにいない」という選考委員の講評に違和感が残るくらい実績を積んでいる。

 作風も初期の歪(いびつ)で難解なものから、洗練されて読みやすいものに変わってきたといわれている。受賞作「共喰(ともぐ)い」も父子の因縁という重い題材を扱いつつも端正にまとまり、選考で突っ込まれそうな瑕疵(かし)は見当たらない。過去4度の候補作と比べ、より芥川賞向きだと実作者なら感じていたと思う。

 例の「当然」発言は、新人賞と定義される芥川賞の立ち位置のあいまいさを改めて突き付けたといえる。

 「共喰い」の単行本(集英社)は27日の発売前に版を重ね、計5万部が店頭に並ぶ。瞬間風速的なキャラクター消費に終わらず、作品がしっかり消化されますように。(海老沢類)

関連ニュース

  • [PR]
  • [PR]

[PR] お役立ち情報

PR
PR

編集部リコメンド

このページ上に表示されるニュースの見出しおよび記事内容、あるいはリンク先の記事内容は MSN およびマイクロソフトの見解を反映するものではありません。
掲載されている記事・写真などコンテンツの無断転載を禁じます。
© 2014 The Sankei Shimbun & Sankei Digital