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【一服どうぞ】裏千家前家元・千玄室 十干十二支、自然の教え

2009.1.4 02:33

 己丑(つちのとうし)年の正月を迎えられ、それぞれ今年の生き方を心に示されたことと思う。とにかく良き年で平和であれかしと念ずるのである。十干(じっかん)十二支は1年ごとに廻(めぐ)ってくる。十二支は誰しもが生まれ年の干支(えと)を持っているので知ることであるが、十干の方はなかなか難しいといわれる。甲乙丙丁戊己庚辛壬癸(キヒツカミ)。その読み方もキノエ、キノトとなるので、なるほど覚えるのにひと苦労かもしれない。

 この十干十二支は、中国の暦から起こったもので、この世は陰陽から成り立ち、五行によって支配されている。太陽と月のもとに木(もく)・火(か)・土(ど)・金(ごん)・水(すい)の自然界がある。木は草木だから春、火は熱いので夏、土は土用(各季節の変わり目の前)、金は秋、そして水は冷たく冬ということになる。とかく今日の人間は何によって生かされているかを忘れがちである。地球上に安住していることすら思っていない。

 しかし、日本人は特に自然四季の存在により、衣・食・住に恵まれて生きていることのありがたさを思わねばならない。のどを潤すために必要欠くべからざる水は、雨や川の恵みによる。そしてまた、木を採り火をおこし食物を煮炊きする智恵が生まれる。人間の思考能力を生み出す力になるこのような天地自然の恵みに、人間はどれほど感謝を捧(ささ)げているのか。自然との接触の中で昔から言い伝えられ、定められてきたことどもが沢山ある。現代ではそれらが迷信だとか役に立つものでないと無視され、忘れさられようとしている。

 太古の昔、人間が地球上で生活を始めたときには何の文明の力もなかった。当時は、如何(いか)にすれば生きていけるかについて、ありったけの思い(今日では智恵であるが)であれこれと思索し続けたことであろう。太陽が昇るとともに目覚め、太陽が沈み月が出るとともに休む。一日中、食糧となるものを探し求め、そしてそれを如何にして食し貯蔵するかを考える。厳しい夏や冬にはさまざまな工夫が生まれた。

 今から50年後には、(いやもっと早くなるかもしれない)食糧不足により地球上の人口が減少していくといわれている。アメリカの食生活の影響は恐ろしい。賞味期限などは、アメリカが食産業を発展させるために仕組んだもので、日本などでは必要のないものである。家庭でそれとなく教えられたのは舌の感覚、味との出合いであった。自分の舌が食の良し悪しや味を決めるのである。食べることが可能なものでも、賞味期限切れとの表示によって捨てられる。使いものにならないなどといわれるのである。全く勿体(もったい)ないことがまかり通っている。お役所が示す点数かせぎのようなことどもに支配されることなく、良し悪しを自分で判断し、自然の恵みに感謝という心をもって、生活態度を自ら厳しく処していくことこそ、食糧危機を乗り越えていくことになる。重箱の隅を爪楊枝(つまようじ)でひっかくようなことばかりに気をとられ、肝心の問題を提起しようとしない世の中である。

 それぞれが十干十二支、陰陽の五行、自然の教えを知り、自分の生活態度を省みる必要がある。間もなく節分も巡ってくる。豆まきをして厄をはらうとともに、己の心の中の悪い鬼をはらうことも思わねばならないのではないだろうか。

 (せん げんしつ)

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