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【異郷に暮らす生き物たち】キョン 放し飼いから野生化

2008.9.18 07:52
小さな原始的なシカ。オスは短い角を持っている小さな原始的なシカ。オスは短い角を持っている

 黒潮が海岸線を洗う千葉県の外房から南房総にかけては、年間を通じて温暖な気候で豊かな自然に恵まれている。本土で、この地域だけに野生化した小型のシカのキョンが生息している。台湾原産と思われ、体長は70センチほどだ。

 かつて外房には人気の観光施設、行川アイランド(平成13年閉園)があった。海岸地形を利用した広い施設内にはキョンも放し飼いされていた。千葉県で飼育歴があったのはここだけで、このキョンが逃げ出し野生化した可能性が高い。平成14年から、千葉県が実施した房総のシカ調査の結果も、ここが移入源であることを裏付けている。施設があった行川地域のキョンの生息密度は一番高く、1平方キロメートル当たり14.7頭だった。

 私は先年の春、2年ぶりにキョンの調査で歩いた。外房線の行川アイランド駅で下車し、国道128号を渡るとすぐに高さ20メートルの崖(がけ)の「おせんころがし」がある。ここは観光施設の外れにあたり、小高い山麓(さんろく)から海へ向かうキョンのけもの道や、小さなひづめの跡、フンなど生活痕跡があちこちに見られる。今も多くのキョンが健在であることを改めて実感した。

 キョンは臆病(おくびょう)なため、夜になってから中山間地の人家や耕作地に出没する。庭木や農作物を食い荒らし、人に会うと低木のやぶに逃げ込んでしまう。シカと同地域に生息し、シカが口にしないランタナの液果やトゲのあるアリドオシ、カクレミノなどの常緑樹の葉まで食べている。野犬のほかに捕食者もなく、繁殖力が旺盛で生息域も外房から内房へと拡大している。

 千葉県はいち早く、外来種が及ぼす影響に警鐘を鳴らしてきた。明らかに外来種であるキョンについては、排除することを目標として取り組んでいる。

 (動物ライター・写真家 鈴木欣司)

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 ■キョン 特定外来生物/原産地・台湾、中国南東部。シカ科

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小さな原始的なシカ。オスは短い角を持っている
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