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【きのうきょう】ある朝に
東京都世田谷区 木場伸子 55歳 イラストレーター
ある日の朝、7時前だろうか。近くの公園までウオーキングに出た帰り、100メートルほど向こうに、点滴スタンドをガラガラ押して横断歩道を渡ろうとしているおばあちゃんを発見した。
前に進みたいが、点滴の車が穴にひっかかって立ち往生している様子。通勤の中年男性や女性が次々通り過ぎるが、声すらかけない。やきもきしながら信号が青になるのを待って、おばあちゃんの元に向かった。
パジャマにスリッパ、腕には名前入りバンドを付けている。「どこに行かれるんですか?」と尋ねると、「家に帰りたいけど、どこか分からんようになりました」。どうやら近くの病院から“脱走”してきたようだ。点滴をゆっくり押しながら病院へ送り届けると、守衛さんがびっくりして飛んできた。
帰り道、自分に関係のないことは、見えていても見えないことにしてしまう人たちに腹を立てた。そして自分の老後を考えると思わずため息が出た。