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【きのうきょう】母の蓬餅
大阪市平野区 中森耐子 70歳
今年も近くの川の堤防では、あちこちにたんぽぽが咲き、蓬(よもぎ)の緑の葉がたわわに風に揺れている。
私は三重県に生まれた。近くには櫛田川が流れ、母とよく蓬の葉を摘んだ。4月のお祭りの時には、母は粒あんの蓬餅をたくさん作ってくれた。皆の大好物で春の香りがして美味(おい)しかった。いまでも蓬餅を目にすると、ついつい食べきれないほど買ってしまう。
実家は建具指物業を営み、田畑は母が耕し、父は川の漁業権を持っていた。小舟で鵜(う)飼いのごとく松明(たいまつ)をたいて網を張り、鮎をとる。大漁のときは、料亭や市場に卸していた。父はお酒好きでよく働いた。母は心の広い優しい人だった。私たち8人兄弟は両親の愛情をたっぷりそそがれて育った。
母は77歳であの世に旅立った。あの川の鮎は、50年前にダムができて姿を消した。毎年、「母の日」がくると、蓬餅と母の笑顔を思い出す。