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【きのうきょう】思い出のピアノ
神戸市北区 加藤洋一 58歳 会社員
ピアノを処分することに決めた。
この話を最初に持ち出したのは家内である。2人の娘が社会人と大学生になり、予想以上に持ち物が増えた。部屋のスペースは限られている。今や誰も弾こうとしないピアノは無用の長物で、処分してその空間に必要な物を置きたいというのだ。
これに私は反対した。ピアノは給与の社内預金を増額してやっとの思いで手に入れたものだ。娘たちもピアノ教室に通い、発表会前に何回も練習した。簡単に処分する気持ちが理解できなかった。
しかし、流れは意外に早く決まった。娘たちが「不要だ」というのである。「せめて私の死後に処分しろ」という言葉さえ出なかった。
ピアノは専門業者が引き取り、東南アジアに輸出されるという。間もなく私が留守の時に姿を消す。それまではピアノにじっくりと触れることにしよう。