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【街物語】(21)新一条流がんこラーメン 「客至上主義」の味 (1/3ページ)
ラーメン激戦区といわれる東京・池袋。サンシャインビルを見上げる飲食店の厨房(ちゅうぼう)に風変わりな男がいた。あごひげを蓄えたさまは芸術家のようにみえ、ボディービルダーのような体は武道家とも思えた。
男は「新一条流がんこラーメン」の創始者家元、一条安雪(やすゆき)(61)。白のランニングに作業ズボン。首から、しわしわのタオルを下げている。
「オレが子どものころ、ラーメン店の主人は、みんなこんな格好だったんだよ」
店から張り出したシートは黒くスプレーされ、店名は見あたらない。軒先に牛の大たい骨が鎖でぶらさがっている。
豊島区の大正製薬本社前で昭和58年、初めてラーメン店を開いたときは「ラーメン道場」という屋号があった。おいしいラーメンを出したかったから忙し過ぎるのがいやになってきた。
「店名を消せば、本当にラーメンが好きな人しか来ないと思った。それには黒いスプレーで消すのが手っ取り早い。それでも目印は必要だと思い、ガラに使うゲンコツが浮かんだ」
スープがしょっぱい。最近は健康ブームで薄味がはやっているが、一条には関係ない。
「実は塩分は感じるほど高くはない。化学者じゃないから理屈はわからないが、秘密はダシ。かつお節やコンブといったダシを大量に使うと同じ塩加減でもガツンと舌に感じるんだ」
月に1、2回出す特別なラーメンがある。「悪魔ラーメン」と名付けた。ダシは、カニやカメ、バナナなどを使う。
「ふつう納豆にわさびを入れようと思わないだろ?。でも、これは結構いける。おれはラーメンにあうと思った具材は挑戦してみる。イチゴは失敗しちゃったけどね」
「悪魔」は、ふだん出すラーメンよりさらにしょっぱい。
「授業で教師がいい話をしても、小さな声で後ろの生徒に聞こえないのはダメ。うるさくても聞こえることが大事。料理も同じこと。1回目は塩辛過ぎるという人も3回食べると魅入られたようにはまる」
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