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【列島深化論】3人乗り自転車 人口減社会に母の夢が 藤原義則 

2008.4.21 08:05
このニュースのトピックス団塊の世代

 今月11日、発表された大阪府の「財政再建プログラム試案」に「35人学級廃止」が盛り込まれた。40人に戻すそうで、是非が問われている。しかし戦後混乱期に出現した「団塊の世代」は55人学級もざら。あまりの大軍団ゆえに日本の貧困と飢餓の加速を予兆させ、官民挙(こぞ)って「産みすぎだ」と叫び出した。昭和29年、産児制限の提唱者、米国のサンガー夫人が国会で「受胎調節を」と陳述まで行った。

 思えば隔世の感がある。先に総務省が発表した推計人口(昨年10月1日現在)は、年間の出生児数が死亡者数を2000人下回る自然減となった。日本が少子高齢化に伴う「人口減社会」に突入したことを改めて浮き彫りにした。

 そんな折、警察庁は、母親から自転車の「3人乗り」(幼児対象)容認を求める要望が続出したため、検討を始めた。経済復興の最中、母親たちは、自転車の前後に乗せただけでなく、3番目の子供をおんぶして4人乗りまで敢行した。違法だが、尻すぼみの時代だからこそ、「逞(たくま)しき母と子だくさんの光景」が懐かしい。

 動きに呼応して神戸市西区の「カワムラサイクル」の関連会社「ランドウォーカー」は、後輪に補助輪が付いた3人乗り自転車「かるがも」を開発、6月に発売する。幼児の練習用4輪に似るが、コーナリングはスムーズだし、スタンドがなくても自立でき、危険な乗降を安全に行える。

 村山民生社長(59)は「かるがもは多産の象徴ですから。でも女性社員たちと大口論してまして…」と上気した顔で現れた。村山さんは、後方に子供2人を積む「完全かるがも型」を推進するが、「母親は幼い方を前に乗せて常に見てないと安心できない。そんなん売れまへん」と猛烈に反論されたという。結局、両方を試作している。

 カワムラの前身、川村工業は大正4(1915)年、創業。かつて「ミヤタ」「丸石」などと並ぶ高級自転車メーカーで、ノスタルジー溢(あふ)れる琺瑯(ほうろう)看板が今も各地に残る。しかし昭和60年代、市場は飽和状態となり業績が悪化。村山さんは大手証券会社の幹部社員として、経営立て直しに尽力したが平成7年、阪神大震災で壊滅的打撃を受けた。

 だが、「もの作りの優れた伝統を残し、従業員たちを救いたい」と全株を取得し、車椅子(いす)製造に乗り出した。もともと高度な技術力があったため、シェアを拡大。近年は業界トップに躍り出た。4年前には東証マザーズ上場を果たした。

 自転車とは縁があったのだろう。熊本県八代市で生まれたが、女学校出の母、春子さん(91)は自転車を花嫁道具に嫁いだハイカラさん。村山さんも小学生当時、大人用を「三角乗り」で乗りこなした。法政大学ではアルバイトの連続で、新聞と酒の配達を続けた。自転車は苦学の象徴であり、母への感謝、憧憬(しょうけい)が込められているようだ。

 カワムラは現在、世界を制覇したホンダのオートバイ工場跡を車椅子生産の拠点とする。東北大学と提携して「足漕(こ)ぎ車椅子」を開発、負荷をかけつつ進む「スローサイクル」など次世代リハビリ型にチャレンジしている。「安全確保。そして利用者の行動半径の拡大に尽きますね」

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