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【凛と生きる】「溶けゆく日本人」番外編(4) (1/2ページ)
□東尋坊で自殺防ぐ 茂幸雄さん
■元刑事「見て見ぬふりできん」
日本海を見下ろす断崖(だんがい)絶壁の奇観が続く東尋坊(福井県坂井市)。年間100万人近くが訪れる景勝地は、毎年20人以上が身を投げる「自殺の名所」としても知られる。その汚名を返上しようと、平成16年4月、NPO法人「心に響く文集・編集局」を開設。岩場周辺のパトロールを続け、120人を超える自殺志願者を救ってきた。
周辺の土産物店が一斉にシャッターを下ろす午後4時すぎは最も緊張する時間だ。双眼鏡片手に、約1キロの岩場を1時間かけて一巡する。「こんにちは。どこから来られましたか?」。カメラや土産を持っていない。景色を見るでもなく動きが緩慢…そんな自殺志願者を見つけると、優しく話しかける。
死のふちから救い出すと、事務所に併設した茶店で名物の「越前おろしもち」を振る舞い、相談に乗る。「あんた、今日までつらかったなー。一緒に解決しようか」。病気、リストラ、借金苦…自殺を考える理由はさまざまだ。不安の根を取り除くため、生活保護の手続きをしたり、住み込みの働き場所を探したり。六法全書を携え、夫婦げんかの調停に臨んだこともある。
「自殺志願者の8割は県外から訪れ、片道切符。でも、何時間も岩場をさまよい、心の中では『誰か助けて!』と叫んでいる。本当は、みんな生きていたいんや」
◇
福井県警の刑事としてマルチ商法やゲーム機賭博といった生活経済事犯を数多く摘発。「他人の顔色はうかがわない。正しいと思ったらとことん進む」突進型のリーダーだった。
定年まで1年を残した15年、東尋坊を管轄する三国署(当時)の副署長に着任し、自殺の多さに愕然(がくぜん)とした。ところが、現場では日常的なパトロールは行われず、保護さくや悩み事相談所もない。「それなら自分が」と、朝夕1人で岩場の見回りを始めた。


