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【凛と生きる】「溶けゆく日本人」番外編(2)江戸小紋職人、岩下江美佳さん (1/2ページ)
■伝統の「心」伝える 一生が修業
「鮫」「行儀」「角通し」…。江戸の粋を現代に伝える「江戸小紋」。遠目に見ればあたかも無地のようでいて、間近に見れば精緻(せいち)を極めた文様であると気づく。もともと武士が裃(かみしも)に用いた染め柄のためだろうか、眺めていると自然に背筋が伸びる気がする。
その染めの世界でただ一人、伝統工芸士の認定を受けた34歳の女性職人だ。
江戸小紋は型染めの一種。生地の上に模様が入った型紙をのせ、その上からヘラで糊(のり)をのばしていく。型紙は、時に1寸(約3センチ)四方に1000粒以上もの小さな点で模様が描き出されている。それほどに繊細な模様がムラなく、ずれないよう、つぶれないよう、ひたすら中腰で作業を続ける。1反(約13メートル)の生地に模様をつけるには、型紙を正確にずらしながら、この作業を50回から100回ほど繰り返さなければならない。
「同じ型紙を使っても、2人の職人がいれば全く別の作品に仕上がる奥が深い世界。型紙という制限の中で、自分らしさを追求し、表現するには、もっともっと腕を磨くしかない。一生が修業です」
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母親の実家が呉服店を営み、祖母はふだんから着物姿。幼いころから着物が身近な存在だったこともあって、高校生のころには「着物を染めている私」を思い浮かべていたという。職人仕事の厳しさを肌で知る両親は「何も好きこのんで苦労をすることはない」と当然のように反対したが、短大卒業後に迷わず東京都内の工房に就職した。
これまで、あまりの重労働ゆえに女には無理といわれてきた職場。「女に何ができる!」。そんな空気を感じながら、おけ洗いや工房の掃除から修業を始めた。染め付け用の長板は長さ約7メートル、重さ40キロ。最初はこの板を持ち上げるにも先輩の手助けが必要だった。


