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【溶けゆく日本人】蔓延するミーイズム(9)豊かな時代の万引 (2/3ページ)
そんな罪悪感のない万引は、悲惨な殺人事件にまで発展した。
昨年10月深夜、大阪府寝屋川市のコンビニエンスストアに現れた2人の少年が、食品などを買い物かごに入れ、店外にかけだした。レジカウンターにいた店員が追いかけて1人をつかまえたところ、刃物で胸を刺され死亡した。
商品を詰めた買い物かごを持って逃走する「かごダッシュ」といわれているものだ。まだ件数は多くないにしても一昨年ごろから各地で発生。今年1月にも新潟県で「かごダッシュ」をした高校生3人を含む少年6人が窃盗容疑で逮捕された。
軽い気持ちの万引は深刻な事態を引き起こす。ある書店では万引の多発から廃業に追い込まれた。いわゆる「万引倒産」だ。書店は利幅が低く、1冊万引されたら5冊売らなければもうけにならない。万引は死活問題なのだ。
都内の大手書店の50代の男性ベテラン店員によると、「25年前は目当ての本がほしくて盗む人もいましたが、いまは皆無。みな中古本販売チェーン店で売ってしまう」と怒りをあらわにする。食品などと違い簡単に換金しやすいためだ。
万引は若者の犯罪というイメージがあるが、なんと最近は高齢者の万引が増えているという。警察庁のまとめによると万引の認知件数は16年をピークに減少傾向にあるが、65歳以上の高齢者が増加の一途をたどっている。14年から17年までは、15歳から19歳までの少年が全体の24%から30%だったが、18年は高齢者が22%となり、少年を上回った。
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東京都内の警備会社に勤務する保安員、長崎智恵美さん(60)=仮名=は、毎日デパートやスーパーで目を光らせる。いわゆる万引Gメンだ。20年にわたり取り締まりに活躍する中で、信じられないような身勝手な情景を目の当たりにしてきた。
ある日、スーパーで万引した小学生の親に連絡したところ、やってきた30代の母親が「やっているのはうちの子だけじゃない」と開き直ったという。「給食費を払わない親が増えているのもわかります。盗んだことに対してまったく罪悪感がないのですからね」と長崎さんはあきれ果てる。
高齢者の万引が増えたことも長崎さんは肌で感じるという。
こんなことがあった。ある地方のデパートの食品売り場で万引した60歳の主婦を捕まえた。「私はよくこの店で買っているのよ、外商担当者を呼んで」と反省もなく威張り散らした。
また万引した独り暮らしの75歳の老女から事務所で話を聴くと、謝罪もせず、「金を払えばいいでしょう」と長崎さんに札束を投げつけた。息子に連絡しても「行かないよ」と引き取りに来なかったという。
「生活にも困っているわけではなく、金は持っていて万引する。自分がやったことを反省せず、悪態をつく老人が多い」と嘆く。

