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【わたしの失敗】茶道裏千家前家元・千玄室さん(84)(2)

2007.12.19 03:19
このニュースのトピックス言語・語学

 ■内証で受験準備、バレて…

 夢と希望にあふれた十代、総じて若者は自身の無限の可能性を信じて疑わないものだ。

 「中学は父の意向で同志社に進みましたが、内心は不服でした。私学は少数派だったし、友人らと同じ学校に行きたかったんです。そんなふうでしたから、大学は自分で決める、東京に行くぞと思っていた。一度は、京都とは違う空気を吸ってみたかったんです」

 負けん気の強い少年は、両親に内証で早稲田と学習院の受験準備を進める。ところが、友人からその企てが母にバレてしまった。

 「『気持ちはわかるけれど、あなたは跡取りです。この家と一緒にいなければいけない。できる限りお父さまの後ろにいて、若い間にこそ大切なことを吸収しなければならないのですよ』とさとされた。帝王学ならぬ、“家元学”とでもいいますか。少しでも早く学ばせておきたいという気持ちがあったのでしょう」

 初釜をはじめ、利休の命日に営まれる利休忌や社寺での献茶式など、茶家の行事は多い。家元というのは、家族や高弟を率いてそうした行事にあたるのが務めだ。自分一人の身ではないということを思い知らされた。

 「結局、同志社に進学するんです。自分にとっては挫折だったが、結果的に、語学をはじめ自由で国際的な教育を受けて広い視野を持つことができた。今となっては両親の先見の明と感謝しています」

 昭和16年4月に同志社大予科に進学。ところがその年の12月、太平洋戦争が始まる。

 キャンパスも日増しに戦時色が強まるなか、昭和18年12月10日、裏千家の兜(かぶと)門から学生服、角帽、たすきがけ姿の学徒が出陣した。

 「父母、恩師、友人たちの盛大な見送りを受けて発(た)ちました。これはもう、二度とここには帰ってこられないなと。一方で、ああ、家元を継がなくてもよくなったんだとも思いました」 =敬称略(文・山上直子)

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