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【環境立国ニッポンの挑戦】第6章 未来に向けて(4)
■来年度はミニ発電所「普及元年」
小高い丘のふもとに、真新しい住宅が立ち並ぶ福岡県前原(まえばる)市の南風台団地。ここに住む九州大学学術研究員の堀米九十九(つくも)さんは、シャワーの蛇口をひねるたびに「変わったな」と実感する。
堀米さん宅では10月に、従来のガス給湯器を家庭用燃料電池に置き換えた。それまでは蛇口をひねると、「ボン」というガス給湯器の点火音が聞こえ、お湯が出てくるまでに時間がかかった。だが、今では音に驚かされることもなくなり、すぐに温水が使える。「操作は今までと同じ。それで省エネできるならいいことだ」と評価している。
この南風台団地と、隣接する美咲が丘団地では、家庭用燃料電池の実証実験「福岡水素タウン」が進められている。県と西部ガス、新日本石油が両団地に住む1800世帯のうち、150世帯に燃料電池を無償で設置するが、堀米さんは最初の設置者だ。ひとつの地域で100世帯を超す燃料電池が設置されるのは世界でも初めてとなる。
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福岡水素タウンの実験は、燃料電池の省エネ効果を検証することが目的だ。
燃料電池は空気中の酸素に水素を化学反応させて発電する。福岡の実験では液化石油ガス(LPG)から水素を取り出すが、ほかにも都市ガスや灯油、エタノールなどが水素の供給源となる。燃料電池は発電だけでなく、その際に発生する熱を利用して温水をつくれるのでトータルのエネルギー効率が高く、通常の温水器や電力利用に比べ45%程度、二酸化炭素(CO2)の発生を抑えられる。
まだ実証実験の段階にある家庭用燃料電池だが、いよいよ来春から一般販売がスタートする。
新日石では家庭用燃料電池の販売を今年度の497台から来年度は一気に4倍近い2200台に、パナソニックも255台を1500台にそれぞれ拡大する計画を立てている。現時点で250万円程度する価格が大きな壁だが、来年度はまさに燃料電池の「普及元年」だ。
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家庭用燃料電池は、これまで発電所という巨大施設が担ってきた役割を各家庭に分散させる。だが、この「ミニ発電所」は家庭だけにとどまらない。
「こんなに小さくなったのか」。10月20日、北九州市で開かれた「水素エネルギー先端技術展2008」で、パナソニックが展示した燃料電池に出席者から驚きの声が上がった。
パナソニックの燃料電池は、ノートパソコン用のリチウムイオン電池とほぼ同サイズ。50ミリリットルの燃料タンクにエタノールを注ぐと、約5時間発電できる。パナソニックでは、CO2発生がゼロと見なされるバイオエタノールを燃料にすれば、「温暖化への影響もなくなる」と期待する。
燃料電池自動車も、着々と開発が進められている。課題の一つだった走行距離も、もはやガソリン車と遜色(そんしょく)ない。「究極のクリーンカー」といわれる燃料電池車が走行中に排出するのは、もちろん水だけだ。
燃料電池は、燃やすことでエネルギーを得ていた「化石燃料」を、水素の供給源として利用することでCO2削減の道を開いた。コストの壁をクリアできれば、日本中にミニ発電所が誕生するに違いない。

