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【正論】慶応大学名誉教授・池井優 伝統文化をどんどん海外に (1/3ページ)
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≪注目される「交流使」≫
海外で日本の伝統的な文化といえば、茶道、華道、書道であり、芸術として頭に浮かぶのが歌舞伎であり、次に能であろうか。歌舞伎は勘三郎率いる中村座がニューヨークで公演し、あの口うるさいニューヨーカーから絶賛され、またパリではオペラ座での開演に先立ち団十郎がフランス語で口上を述べるなど、「カブキ」はいまや世界で評価される日本を代表する芸術となった。
しかし、日本の誇る伝統的な芸術も、文化の違いによってまったく理解されないこともある。たとえば、芭蕉の名句「古池や蛙(かわず)とびこむ水の音」も「蛙」をフロッグと訳すと(ほかに訳しようがないのだが)、カエルがポチャンと池にとびこむ滑稽(こっけい)なイメージとなり、苔(こけ)のついた古い池に蛙がとびこみ、波紋が広がったあと静けさが戻ってくる幽玄な情景は海外の人々には絶対に浮かんでこないのだ。
日本語のままでは、海外での紹介には限界がある。川端康成がノーベル文学賞を受賞できたのも、日本と日本文化を熟知するエドワード・サイデンステッカー教授が、名作「雪国」をはじめ川端文学を文化の壁を乗り越えて欧米人に理解できる美しい英語に翻訳してくれたからである。
日本の誇る文化を海外に紹介するにはいろいろな方法があるが、一番望ましいのは、芸術家、文化人、研究者など日本の文化に深く携わる人々に一定期間「文化交流使」として海外で活動してもらうことである。

