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【正論】規範なしの排出量取引は危険 東京大学先端科学技術研究センター特任教授・米本昌平 (1/3ページ)
≪環境省のマスコミ対策≫
地球温暖化対策の一つとして、温室効果ガスの排出量取引について日本でも本格的な議論が始まった。それ自体、大いに歓迎すべきことである。ただしその際、EU(欧州連合)の排出量取引制度について、これまでの評価を改める必要がある。
最近までEU排出量制度は、唯一の先行モデルとして、これを絶賛する論調が圧倒的だった。導入するのは全くの善であり、それどころかいま認めなければ世界の趨勢(すうせい)に遅れるという論調である。だがこれは、マスコミに大量の好意的意見を載せさせて一気に政策を認めさせる、環境省の政治手法の産物である疑いが濃厚である。水俣病問題以来の「ムシロ旗作戦」と呼ばれるお家芸である。
EU排出量制度は、欧州共通市場を所管する超国家的組織であるEUの指令に根拠を置くもので、国際法上も京都議定書が定める国際間の排出量取引に該当する。京都議定書に排出量取引があるのは、米国をつなぎとめるための妥協の産物であり、EUはこれに一貫して反対してきた。だが共通の環境税導入に失敗した後、EUは方向転換し、死文同然にあったこの条項を、EUの権限拡大の思惑も計算の上で導入したのである。確かに、EU指令の第1条には「費用効果的な方法で温室効果ガスの排出削減を推進する」とあるが、これは政策目標としてのお題目でしかない。
≪削減効果薄いEU方式≫
2005年から試行が始まったEU排出量制度に対しては、いくつか批判が出されている。第1に、排出量を無償で配分したため、参加企業にタナボタ式に財が転がり込み、売却益を得たり、時には削減を先送りした方が得になっている。第2に、排出量の配分は、EUと各国、各国政府と企業の2段階で行われるが、ほぼ要求通り配分せざるをえず、そのため慢性的な認可過剰となり、市場取引は低迷が続いている。

