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【一服どうぞ】裏千家前家元・千玄室 欲望が地球を悪くする
去る9月23日、イタリアのヴァチカンで法王様に謁見(えっけん)をさせて頂くことができた。在ヴァチカン日本大使上野景文様、和田誠神父様のお取り計らいで光栄極まる機会を得て有り難いことであった。法王様の暖かい御手にふれ、御言葉を交わし“一●(いちわん)から平和”の茶の心のお話を申し上げ、祝福をくださった。自然とともに地球に住んでいることに感謝をささげることが必要だと、法王様は常におっしゃっている。
中国唐の時代の龍牙居遁(りゅうげこどん)という僧が、次の詩を残している。
木食草衣心似月(もくじきそういこころつきににる) 一生無念復無涯(いっしょうむねんまたむがい)
若人居何処住問(もしひときょいずれのとこにすむかととわば) 青山緑水是我家(せいざんりょくすいこれわがや)
木の実を食べ草の衣を着て生活すれば、自分の心も月と同じようになる。仮に人から「住居は何処か」と問われたなら、即座に「青山緑水是我家」と応える。
『法句経(ほっくきょう)』にいわく、「知足は最も富なり」と。この世のすべての人々がこの知足を生活に活(い)かすことができれば、心は満ち足りて、この世は平和だという教えである。足ることを知れば楽しい生活もできる。背伸びをして、あれもこれもと欲のみに溺(おぼ)れる弱さは誰にでもあるが、我慢辛抱も大切である。それには、努力をしなければならない。例えば、消費という欲望が地球環境をどんどん悪くしている。自分の周辺を見て何が地球の自然環境を悪くしているのかを調べることも大事な問題である。
地球温暖化の問題で世界がゆれ動いている。科学文明・物質文明は発達したが、地球上の一方の国々では大切な水すら枯渇し、食物も不作、そして地の恵みもとだえ、然る上に内戦が続き、人間は飢えと病気などで塗炭の苦しみに陥っている。人間生活の不公平の中で地球温暖化は日ごとに進み、このままでは人間社会は、百年ももたなく滅びてしまうのではないかと杞憂(きゆう)するのは当然である。
流水無間断(りゅうすいかんだんなし) そして落花有意随流水(らっかいあってりゅうすいにしたがい) 流水無情送落花(りゅうすいじょうなくしてらっかをおくる)
これもまた自然の在り方を示している教えである。花は川の流れの何処に落ちようが問題ではないし、水も定まったところを黙々と流れている。花は水に流されるが水の流れに身をまかしている。お互いに無意識のうちに合体しているのである。自然とは誠に尊い。そうしたことを風流だと思って終わってしまったのでは何のこともない。人間の立場を花に例えて考えてみると、現代の人間は世の流れの中で、もがき苦しんでいるのではないだろうか。
また今の人間は、自分を孤独にしている。家族はあってもそれぞれが一人一人、individualな生活方法をとっている。だから家族が一体となって、困難や苦しみを分けあってよい方向に進もうとする努力がない。知って知らぬふりというか、貴方は貴方と口を塞(ふさ)ぐからかえって、鬱積(うっせき)する感情が爆発してしまう。穏やかな家庭をつくるためには、お互いが立場を見つめ合い、言いたいことを言って議論し、善悪をしっかり見定める心の在り方を持つようにしなければならない。それは生かされていることに感謝する心をもつことによって実践できるのではないだろうか。(せん げんしつ)
●=怨の心を皿に