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【教育動向】「全入時代」の大学教育はどうなる
私大の47%が定員割れ−−7月末の新聞各紙に、こんな見出しが躍ったのをご覧になったと思います。日本私立学校振興・共済事業団が毎年行っている調査によるものですが、大都市圏の大規模校に人気が集まる一方で、それ以外は定員の確保に苦労するという「二極化」の現象が起こっているといいます。ところで大学は、えり好みしなければどこかには入れる「大学全入時代」が訪れると言われています。これを機会に、全入時代の大学教育がどうなっていくのか、考えていきましょう。
先の調査で2008(平成20)年度の志願倍率の分布を見ると、9倍以上という大学が75大学もある一方で、1倍台は179大学に上っており、1倍未満も 59大学あります。実際の合格率が100%という大学は22校しかありませんが、90%台という大学は128校あります。つまり、全体(565校)の 1〜2割はすでに希望者全入か、それに近い状態にあるわけです。
たとえ全入状態にない大学であっても、かつて受験競争が厳しかった時代に比べれば、全体としては、より入りやすくなっていることは確かです。逆に、大学側から見れば、学生の質は昔に比べて低下する、ということになります。
そうした点に危機感を抱いた中央教育審議会は、今年3月、「学士課程教育の構築に向けて」と題する部会報告をまとめました。そこでは、大学生に求められる共通の力を「学士力」と位置付け、どの学部でも身に付けさせるようにしたり、各学部(分野)の教育内容に一定の標準を設けたりすることを提言しています。報告は近く正式な答申となる見通しですが、ここでは大学教育の「質保証」ということが、全入時代におけるキーワードとなっています。
ところで、こうした学生の学力低下の心配は、難関大学には関係ないことなのでしょうか。これについて最近、東北学院大学の神永正博准教授(数学専攻)が『学力低下は錯覚である』という本で、わかりやすい説明をしています。極端な例ですが、大学志願者が15人しかおらず、大学が三つだけ、という場合を想定しましょう。そのうち一番上のレベルの大学が定員3人だったとしたら、入学できるのは15人のうち上位20%、という計算になります。しかし、少子化で志願者自体が10人に減り、定員も3人のままなら、上位30%までが入学できることになります。大学生の学力低下を高校までの「ゆとり教育」のせいにする風潮もありますが、実は「錯覚」という面もあるわけで、少子化に合わせて定員を減らさなかった大学側にとっては必然的だった、というわけです。
かと言って、大学が自らの定員を積極的に減らそうとするとは考えにくいでしょう。そうすると、入ってきた学生をいかに教育し、社会の期待に応えられる人材に育てられるかどうかが、大学の存亡を分けることになります。受験生にとってもどうやら、より上位の大学に入りさえすれば安心できる時代ではなくなっている、と言えそうです。
(提供:Benesse教育情報サイト)