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【産経抄】8月16日

2008.8.16 03:31
このニュースのトピックス産経抄

 地下鉄の九段下の駅から長いエスカレーターを昇りきり、坂道を行くと、靖国神社の大きな鳥居が見えてくる。その前で、2本の百日紅(サルスベリ)の花が迎えてくれる。しかし、そこから本殿までは、まだ長い参道を歩いていかなければならない。

 ▼昨日15日、東京の最高気温34・9度という猛暑の中、今年もたくさんの人たちが黙々と歩いていた。最近では若い人の姿も増えたが、目につくのは戦没者の遺族らしい年配者である。今はエスカレーターによって大分楽になったとはいえ、厳しい参拝の道である。

 ▼その靖国神社が人波でうまっていたころ、すぐ隣の日本武道館では政府主催の全国戦没者追悼式が開かれていた。遺族ら約5700人が参列したという。だが、そのニュースを聞いていて首をかしげたくなった。河野洋平衆院議長による追悼の辞を聞いたときだ。

 ▼「政府が特定の宗教に拠(よ)らない追悼施設の設置について、真剣に検討を進めることが求められる」と述べた。福田康夫首相が官房長官時代に検討された靖国神社に代わる国立の追悼施設のことである。今、棚上げ状態になっているだけに実現を促したかったのだろう。

 ▼むろん政治家だから、どんな意見を述べようと自由である。しかしその追悼の辞の間にも、靖国神社への坂道を遺族たちが、戦死した家族と会えると信じて汗だくで歩いていることを考えなかったのだろうか。そのことを思えばとても遺族の前で言えることではない。

 ▼今年も福田首相をはじめ大半の閣僚が靖国参拝を見送った。むろん河野議長もそうだ。それならせめて一度だけでも、参拝の風景を見にいってほしい。そうすれば、政治レベルで代替施設を造れなどと軽々な議論はできないはずである。

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