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【公教育を問う第4部(5)】「実践力不足」塾で補う

2008.5.17 01:36
このニュースのトピックス大学教育

 「教室は舞台だ。教師は一流の演出家であると同時に名脇役たれ」

 現職教員や教員志望者を対象に、首都圏を中心とする大手進学塾、早稲田アカデミーが昨春から始めた「教師力養成塾」(東京都新宿区)の初回の講義。教壇に立って14年目という諸葛(もろくず)正弥講師(33)は、授業を演劇にたとえた。

 模擬授業では「声に抑揚がない。授業で大切なのはニュアンスや臨場感」「目が伏し目がちだ。生徒に目をやる時間が長いほど、手遊びや私語は避けられる」と厳しい指摘が矢継ぎ早に飛ぶ。

 視線の置き方や教壇に立つ際の立ち位置、板書の方法などテクニカルな指導も多い。

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 学級崩壊の学校も多いのに生徒はなぜ、塾では真剣になるのか。そのコツも“伝授”している。

 (1)教師が生徒と対等にならない縦の関係を構築する(2)「教科書を開いて」などの単純な指示を徹底して生徒の行動をコントロールする(3)明るく大きな声で生徒に向き合い、教師のやる気を表現する−の3点が大切だという。

 教員への転職を志し、今春から受講し始めた都内の男性公務員(43)は「頭では理解しているつもりでも実際やってみると明確に違う。未熟な点を気付かされ勉強になる」。最初は腕組みして小ばかにしていた教職員組合幹部が最終的にはメモを取っていたこともあったそうだ。

 塾や予備校業界は競争の世界。授業や進学実績が悪ければ生徒や保護者はすぐ離れる。ノウハウを得ようと高校教師が予備校で研修を受ける連携も広がっている。

 大手予備校「代々木ゼミナール」では平成14年から教員研修を開始。東京、茨城、宮城、秋田など多くの教委が予算化しており、これまで延べ1万人以上が受講したという。

 同予備校の教員研修センターの鍋島史一部長は「私立高校の非常勤講師が公立高の常勤教員に“異動”するなど、教員の『流動資産化』傾向が強まっている」とし、授業力を高める重要性を指摘する。

 東京大の中原淳准教授(教育学)は「教員の仕事は学級経営から生徒指導までさまざま。養成塾の授業だけで解決するものではないが、教員が考え直す一つの機会にはなる。自治体、NPO、塾を問わず、教師力向上へ向けて社会全体で取り組むのは良いことだ」と意義を強調する。

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 大学の教職課程の「実践力不足」が指摘され、優秀な教員の「卵」を自前で即戦力に育て上げようと、自治体を中心とした教師養成塾が首都圏や大都市部で林立している。

 小学教員志望者を対象とした横浜市の「よこはま教師塾」の場合、横浜の歴史や自然体験学習、小学校英語など大学では教えない内容も指導する。東京都の「教師養成塾」ではモンスターペアレント対策として苦情電話の対応も実演する。

 団塊の世代の大量退職に伴い、教員の質の確保が課題で、人材の「青田買い」という狙いもある。

 東京教師養成塾、東京都杉並区の杉並師範館、よこはま教師塾はいずれも、教員採用試験で優遇措置がある。8〜18万円の年間授業料は、その自治体で教員になれば免除。事実上、入塾試験が採用試験を代替している。

 東京学芸大の岩田康之准教授(教育学)は「都道府県と政令指定都市にある教職員人事権が今後、中核市などの市町村に降りれば、追随する自治体はさらに増えるだろう」と予測する。

 その上で「養成塾に通う教員志望者は真面目だが積極性が物足りない傾向もある。最初はうまくいっても、長期的に成功するかどうかはまだ分からない」と話す。実践力以外にも幅広い教養や社会性、感性をはぐくんでいけるか。取り組みは始まったばかりだ。

=第4部おわり

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 慶田久幸、鵜野光博、小田博士が担当しました。

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