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【産経抄】2月23日

2008.2.23 02:46
このニュースのトピックス産経抄

 金太郎飴(あめ)といえば、どこを切っても同じ顔が出てくる。右へならえで個性がないことの例えにされることが多い。ところが鳥居フミ子さんの『金太郎の誕生』などを読むと、伝説あるいは昔話の金太郎はさまざまな「顔」を持っていることに気がつく。

 ▼金太郎は平安時代、源頼光の家来で酒呑童子退治などに活躍した坂田金時の幼名とされる。ところが、古代から中世にかけての金時に関する文献に、その子供時代の話は見られない。江戸初期、金時の子供を主人公にした浄瑠璃に初めて出てくるそうだ。

 ▼やがて草双紙などを通じ、足柄山の山奥で山姥(やまんば)のもとで育ち、頼光に取り立てられる怪力の若者といったイメージが定着する。典型的な英雄譚(たん)の主人公であり、魔よけ的存在にもなった。妖艶(ようえん)な美人である母親の山姥の方を主役にしたような浮世絵もあったという。

 ▼それが明治時代、巌谷小波が「日本昔噺」で描いてからは、健康で相撲や馬術のけいこに励む男児ということになる。強い国家を目指した明治の理想的人間像だった。一方では鉞(まさかり)をかついで動物たちと遊ぶメルヘン的な子供たちのアイドルとして「成長」していく。

 ▼文科省が発表した新学習指導要領案で小学1、2年で読み聞かせる昔話や伝説の候補として「金太郎」が挙がっていた。戦後、教育現場で軽視されてきた伝統文化を復活させるのは賛成だ。ただ困るのは、一体どんな金太郎を子供たちに教えたいのかが伝わってこないことだ。

 ▼子供たちよりもまず大人が日本の昔話を学んでみたらどうだろう。金太郎や桃太郎、浦島太郎たちの姿に実に多様なこの国の文化が反映されていることがわかるはずだ。何を子供たちに伝えていくか、おのずから見えてくるに違いない。

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