ニュース: 生活 RSS feed
【産経抄】1月21日
このニュースのトピックス:産経抄
校舎の裏で、1人の生徒がいじめっ子たちに小突かれている。主人公が飛び込んでいくと、体罰の批判を恐れる教頭に羽交い締めにされてしまう。NHKの土曜ドラマ『フルスイング』には、学園ドラマでおなじみのシーンがあった。
▼モデルとなったのは、プロ野球の打撃コーチから高校教師に転じた高畠導宏さんだ。門田隆将さん原作のノンフィクション『甲子園への遺言』(講談社)によれば、問題のある生徒との対決はもっと派手だった。
▼「こらあ、舐(な)めとったら、承知せんぞっ」。学校中に響きわたる怒声とともに、椅子(いす)を机にたたきつけ、それが跳ね返って壁に激突する。生徒たちは呆然(ぼうぜん)と立ちつくすばかり。実はあらかじめ校長の許可をとり、まもなく取り壊されることになっている建物で行ったパフォーマンスだった。
▼生徒の体に指一本触れていないのに、高畠さんの真剣さが体罰以上に伝わった。もちろんその後のフォローも忘れない。のべ30人以上のタイトルホルダーを育て上げた伝説のコーチのすごみを見せつける。
▼今、学校は大変なことになっているようだ。生徒たちは、教師のいうことに聞く耳をもたないどころか、携帯メールで悪口を広めることもある。書類作成などの仕事が増えた教師は、モンスターペアレントの対策にも追われる。高畠さんは59歳でそんな現場に飛び込んだ。
▼通信教育で教職を履修したのは、コーチ術に生かすためだったが、教育実習で、残りの人生を子供たちにささげたいとの思いに駆られたという。社会科教師として、教壇に立ったのはわずか1年あまりだった。夢だった高校野球の監督就任を目前にして病に倒れた。そんな高畠さんの生き方を、多くの悩める教師に知ってもらいたい。