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【正論】歴史問題は時事問題である 上智大学名誉教授・渡部昇一 (1/3ページ)
東京裁判パル判決に対する誤解
≪70年前の事件が熱い≫
東京オリンピックの頃にその50年前の話を政治問題にする人はいなかったであろう。オリンピックは1964年、その50年前といえば、1914年、つまり第一次世界大戦の勃発(ぼっぱつ)した年である。そんな頃の話は完全に歴史家の分野であった。
しかし去年は南京陥落から70年もたっていたのに、中国系の資金が動いたらしく、10本ものインチキ南京大虐殺映画がアメリカやカナダで作られ、また南京では大虐殺の記念館が数十億円を費やして大拡張された。70年前の事件が−それが虚構であることが完全に証明されているのに−まだポッポと燃えている熱い時事問題なのであり、未来問題でもあろうとしているのである。
昭和12年の夏、上海あたりにいたのは日本陸軍ではなく、日本人居留民保護のための陸戦隊が3000人程度いただけだった。日本の陸戦隊というのはアメリカの海兵隊とは違って、水兵さんたちが軽武装で居留民保護に当たるのであって、本格的戦闘部隊ではない。その陸戦隊が、数個師団の蒋介石の精鋭主力陸戦部隊に攻撃をしかける可能性はゼロだ。この戦争はユン・チアンとジョン・ハリデイの『マオ』によって、張治中将軍がスターリンの命令で始められたことが説得的にのべられた。
この前の戦争が時事問題であることを示唆していると思われたのは安倍前首相のパル判事とチャンドラ・ボースの遺族訪問であった。安倍さんは首相として、この前の戦争がまだ時事的な政治問題であることに折にふれて気付かれたのではないだろうか。そして東京裁判に対するパル判決書を抜いてはその根本的な解決に至る道はないことも。
≪ガンジー主義であっても≫
ところが最近パル判事について奇怪な妄論(もうろん)が現れている。パルさんはガンジー主義者であったから、日本の戦争責任を許したわけではないとか、従ってパルさんは日本の保守主義者がそんなに有難がる必要はないとか。

