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【やばいぞ日本】第4部 忘れてしまったもの 完 番外(下) (3/3ページ)
「企業の世界も全く同じ。サブプライム・ローン問題だけじゃない、これは世界的な傾向だよ」
銀行マンの友人はこう解説する。欧米型の株主重視主義とファンドの短期的利益追求というのが最近の風潮だ。確かに、ビジネスの世界ではそれが世界標準なのだろう。
しかし、日本の若いエリートたちが「国のために働く気概」を失いつつあるのだとしたら、実に深刻だ。
2000年の大統領選挙でブッシュ候補は「思いやりある保守主義」を提唱し、高く評価された。
この弱者に優しい保守主義のルーツは名門イェール大学時代にさかのぼる。一時アル中におぼれたブッシュを再起させたのは昔、学んだノブレスオブリージュの精神とキリスト教であったという。三つ子の魂百までというが、米国の健全なエリート教育の底力を感じさせる話だ。
日本の場合はどうか。戦後教育では、能力よりも平等が重んじられた。エリート主義は特権階級のものだと退けられた。国家主義は悪いことで、人権尊重と民主主義こそが正しいと教わった。
こうした教育と「国のために働く気概」の欠如との因果関係を筆者は証明できない。しかし、これまでの日本にノブレスオブリージュを伴った真の意味のエリート教育が欠落していたことだけは間違いない。
今日の政治の混乱を見るにつけ、日本を弱体化させているのは、実は日本人自身であることを痛感する。
明治維新によりサムライは官僚となり、武士道精神は日本版ノブレスオブリージュとして官僚組織に受け継がれていった。しかし、平等主義教育と拝金主義経済は官僚たちからサムライの心意気を奪いつつある。巨大な官製シンクタンクはもう復活しないかもしれない。
統治機構がずたずたになって、大きな打撃を被るのは国民生活そのものである。民間シンクタンクがだめなら、もう一度、公務員制度を抜本的に見直し、ノブレスオブリージュを持つ真の意味の「エリート官僚」を新たに養成するしかない(寄稿 宮家(みやけ)邦彦)
宮家氏は1978年東大法卒、外務省入省。日米安保条約課長、中東アフリカ局参事官など歴任し退職。現在立命館大客員教授、AOI外交政策研究所代表。54歳。
「やばいぞ日本」第5部は12月上旬、再生へのシナリオをテーマに展開します。


