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【やばいぞ日本】第4部 忘れてしまったもの(4)問題教員、他校に押しつけ
公立の小中高校などの問題教員が、2000人に1人しかいないという文部科学省のデータがある。まともな授業ができずに「指導力不足」と認定された教員は約90万人のうちの0・05%、450人しかいないという、今年9月に発表された昨年度の調査結果である。
これに首をかしげる教育関係者は少なくない。指導力問題に詳しい北海道紋別市立渚滑中学教頭、長野藤夫氏は「450人は氷山の一角ですらない。現場感覚でいえば20人に1人が指導力不足だ」と話す。「教育委員会関係者は低く見積もっても教員の1割が資質に欠けていると話している」と言うのは京大名誉教授、市村真一氏だ。
なぜ、現状とかけ離れた数字が出るのか。実は教育現場では、問題教員であることを隠して、学校間でたらい回しにするケースが少なくない。
都内のある小学校で数年前、こんなことがあった。
新年度早々、4年生の保護者が校長に苦情を寄せた。「担任の先生が一方的な授業をする。子供はついていけず、嫌がっている」。その教員は転勤してきたばかりの50代のベテランだ。
前任地の小学校から引き継いだ勤務評定書には、経験豊かで指導力があるというAランクの評価がついていた。校長が信じられない思いでのぞいた授業はこうだった。
教員は教科書の内容を、板書しながら早口で説明していた。児童の1人が質問しようとして「先生」と手を挙げた。
だが、「後でね」といって取り合わない。教員はひと通りの説明を終え「ノートに写して」と指示した。数人がノートに書き始める。何もせずにぼんやりしたり、小声でおしゃべりしたりする児童もいるが教員は気にする様子もない。5分たったところで、教員は黒板を消し始めた。まだ写していない児童から、「えーっ」という声が上がる。教員は構わず、再び板書しながら早口で説明を始めた…。
児童とコミュニケーションをとらずに一方的な授業をする、典型的な問題教員だった。「だまされた」。そう思った校長は、前任地の校長に電話で抗議した。返答はこうだった。「どこでもやっていることだ」
教員を指導力不足と認定するには通常、(1)校長の申請(2)市町村教委の検討(3)弁護士ら判定委員会の審査(4)都道府県教委の決定−という手順をとる。
校長はその際、詳細な報告書を作成しなければならない。それに教員は抵抗し、訴訟を起こすこともある。この煩わしさを避けるため、認定手順をとらずに教員を他校に転勤させようと画策する校長が少なくない。だが、指導力不足と分かればどこも引き取ってくれない。それで勤務評定書に悪いことは書かないようになってしまったのだ。
もたれ合いである。学校や教委が実態に即したデータを出そうとせず、文科省がそれをうのみにする。中高生らのいじめ自殺が相次いでいるのに、文科省が7年連続で、いじめ自殺はなかったとするずさんな調査をまとめたのと同じ構図だ。
こうして問題教員は放置され続ける。その結果、「子供たちはやる気を失い、学級崩壊に陥る。学校全体がめちゃめちゃになる」。問題教員の実態に詳しい元東京都教育委員会統括指導主事、鈴木義昭氏の指摘だ。
これでは公立教育への保護者や子供たちの不信感は決定的になり、公立離れにさらなる拍車をかける。
◇
■教組に屈し“デタラメ通信簿”
児童生徒とコミュニケーションがとれず、授業が成り立たないといった問題教員が、なぜ目立つのか。
ある教育委員会の指導主事が、自戒を込めて次のように指摘する。
「実は指導力に問題のある教員は昔から少なからずいた。こうした教員の問題に文部科学省や教育委員会が厳しく対応してこなかったツケが、今になって露呈したにすぎない」
きちんと対応しなかった背景には日教組など教職員組合に遠慮してきた面が否めない。端的な例が勤務評定だ。
日教組は1950年代後半、「教育への権力統制の強化だ」として教員の勤務評定に反対する「勤評闘争」を展開した。その結果、評定を処遇に反映させないとする不自然な慣行が全国的にほぼ確立した。
そうである以上、何を書いても構わないと、でたらめな評定でダメ教員を転勤させようとする校長がいるのもこのためだ。
文科省調査で指導力不足と認定された教員の8割以上を40代と50代のベテランが占めるのも、きちんとした勤務評定が行われなかったことが大きいといえる。
これに対し、東京都教委は昨年度から、独自の評価制度をつくって昇給などに反映させるようにした。
大阪府、広島県(管理職のみ)もこうした評価制度を始めた。ただ全国的には以前からあった愛媛県を含め、4都府県にとどまっている。
教育改革を最重要課題に掲げた安倍前内閣の教育再生会議は今年1月、教員免許更新制の導入を提言する第1次報告をまとめた。更新講習の修了認定を厳格にし、問題教員を排除することを念頭に置いていた。
ところが文科省の中央教育審議会はその後、更新制の目的を「教員の資質向上を図る前向きな制度」と位置付けて事実上、骨抜きにしてしまった。
ここでも、更新制に反対する日教組などへの“過剰な配慮”が見え隠れする。
問題教員は採用段階でも排除できるとされるが、前出の長野藤夫氏は「教員の資質を見極める教委の能力にも問題がある」と指摘する。
教員の場合、正式採用になるまでの試用期間が一般の地方公務員より長く、1年間と定められている。教員としての資質を厳格にみるためだが、昨年度に正式採用にならなかったのは、病気による依願退職などを除けば23人で、全体の0・1%にすぎない。制度が機能しているとはとてもいえない。
文科省は来年度予算の概算要求に、今後3年間で公立の小中学校の教員を2万1000人増員する計画を盛り込んだ。少子化で児童生徒が減少しているにもかかわらずである。莫大(ばくだい)な税金を使って、問題教員を増やしているのが現実である。(川瀬弘至)

