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【連載企画「闘う臨床医」】(2)責任追及よりも発案・改善を 弁護士・井上清成氏 (1/2ページ)
このニュースのトピックス:医療問題
東京都渋谷区の夫を殺害し、遺体をのこぎりで切断したなどとして、殺人や死体損壊などの罪に問われた事件で、東京地裁は4月28日、妻に対し完全な責任能力を認めて有罪判決を下した。
この事件が注目された点の一つは、弁護側だけでなく検察側の精神鑑定でも「心神喪失状態」とされ、刑事責任能力なしとして無罪になる可能性があったことである。
しかし、裁判所は鑑定の結果を採用しなかった。医学鑑定は、必ずしも刑事裁判をコントロールできない、という一例だろう。
今年4月、厚生労働省は「医療安全調査委員会」創設に関し、第3次試案を公表した。昨年10月に公表された第2次試案を受けたものである。第2次試案は、あたかも医療事故に関する医療者への責任追及を制度の目的としているかのように見えるなど、多くの欠陥があった。
そこで第3次試案では、制度の目的を「医療の安全の確保」と明確にし、名称も「医療安全調査委員会」と変え、「委員会は、医療関係者の責任追及を目的としたものではない」と明示したのである。
しかし、その機能や結果は依然、「安全」よりも「責任追及」に重点が置かれているように思う。医療事故調査は相変わらず、善しあしの「評価」(法律用語で言えば「鑑定」)に重点があり、「発案・改善」には重点がない。つまり第3次試案の委員会は、第2次試案と同じなのである。
医療安全の確保策には問責型(国家による責任追及)と改善型(現場からの研究改善)の2つがあると思う。問責型は、強い営利動機などに基づく反倫理的な、無謀な医療者を抑止するのにふさわしい。これに対し改善型は、反倫理性は強くないものだが不注意に基づく医療ミスの改善に適している。現在の医療界には、医療現場からの検証や提案に基づく、後者の方こそふさわしい。