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【厚労省のカルテ】(6)社保庁の三層構造と厚い壁

2008.4.21 08:28
このニュースのトピックス年金問題

 1月23日の総理官邸。会議が進むにつれ、委員たちの舌鋒(ぜっぽう)が鋭くなっていった。「皆さん方に問題はないのか」「国民の目から見たら、わがままとしか思えない」

 3階の会議室で開かれていたのは「年金業務・組織再生会議」(座長、本田勝彦・日本たばこ産業相談役)。社会保険庁の2つの労組幹部からのヒアリングがテーマだった。会議室奥に座った労組幹部らは「混乱を申し訳なく思う」としながらも、言い訳に終始。委員らとの認識の違いが鮮明化するばかりだった。

 社会の激しい不信と批判を招いている年金問題。背景に横たわるのが、厚労省のキャリアとノンキャリアの間にある壁の存在。とりわけ、外局の社会保険庁にある「三層構造」と呼ばれるいびつな人事システムが抱える病巣は深い。

 正職員だけで約1万7000人の巨大組織。束ねるのは、30人ほどの厚生労働省から出向するキャリア官僚(国家公務員I種試験合格者)。彼らの赴任期間は2年ほどだ。次いで約800人の本庁採用のノンキャリア組。そして都道府県単位で採用される地方採用のノンキャリア職員。お互いに交流はない。

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 三層間の壁の厚さを、厚労省OBは「多少頑張っても出世できないため、職場環境や小さな権益に喜びを見いだすしかない」と証言する。確執が先鋭化し「キャリア官僚の着任拒否」「幹部の地方視察拒否」となったこともあるようだ。

 内向きに団結していったノンキャリアたちは組合も組織し、「独立国」を築き上げた。

 「1日のキーボードへの打ち込み5000タッチ以内」といった「覚書」を結び、労働環境を手厚く保護しようとする姿勢は、年金記録のぞき見や、ずさんな記録管理といった不祥事の温床となった。

 暴走ぶりは、組合の一つ「全国社会保険職員労組」が今年3月に、「国民の立場に立った業務運営という視点が不足していた」と総括したほど。いずれ厚労省本体に戻るキャリアたちは見て見ぬふりをした。

 社保庁は「年金業務・組織再生会議」の討議に沿って廃止・解体され、年金業務は平成22年1月に日本年金機構に移行される。

 職員身分は民間人となり、成果主義人事も導入される。都道府県に1つずつある社会保険事務局は、9つほどの「ブロック本部」に再編し、地方採用職員の異動を広域化する。

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 しかし、どこまで三層構造にメスが入るかには早くも疑問が出ている。

 “ミスター年金”こと民主党の長妻昭政調会長代理は、3月6日の日本記者クラブの講演で「社保庁は三層構造を残そうと画策している」と痛烈に批判した。地方採用職員の異動や評価などの人事管理は、各ブロックにおいて行う形とすることが計画されている。「ブロックごとにブロック長が(人事を)決めたら、中央から人事を掌握できない」と長妻氏。

 ほかにも、改革への骨抜きの動きがちらつく。社保庁職員の機構への採用にあたっては過去の処分歴を重視すると同時に、処分者のその後の働きぶりを評価する道も残された。すかさず社保庁は平成18年の勤務評価で、査定期間内に年金保険料不正免除・猶予で懲戒処分を受けた26人に「A評価」。14日には全国健康保険協会に採用される1800人の内定が出たが、過去に処分を受けた388人が含まれていた。

 住み心地の良い三層構造を維持したいと考える力学が働いているのではないか−。そんな懸念が現実のものとなりつつある。

 冒頭の会議。組合側からは最後まで「本庁の指示の悪さが混乱の原因」「職員の健康管理も大切」といった主張が出ていた。

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