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【正論】学術会議の「代理出産」見解 京都大学名誉教授・加藤尚武 (1/3ページ)
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試行的な実施は容認
女優の向井亜紀さんは、手術で子宮を摘出してしまったために、自分では赤ちゃんを産めないので、夫の精子と自分の卵子からできた受精卵をアメリカの女性のおなかにうつして代理に懐胎(出産)してもらった。
双子の男の子を得たが、日本のお役所では「自分のおなかを痛めたのでないとはっきり分かっている子どもを向井さんの実子として戸籍にいれるわけにはいかない」と届け出を突っぱねた。
法廷で争う結果になったが、最高裁判所は平成19年3月に「子の母は現行民法の解釈としては、その子を懐胎し出産した女性と解さざるを得ず」向井さんとの間では母子関係は認められないという判決を出した。
しかし「代理出産という民法の想定していない事態が現実に生じている以上…立法による速やかな対応が強く望まれる」という要望が書き加えられた。
法務大臣と厚生労働大臣はこの問題について、日本学術会議に審議を依頼した。日本学術会議は平成17年の法律の改正で、内閣総理大臣の直属となり「政策提言機能の強化」という方針を打ち出したところである。両大臣の依頼を受けて、日本学術会議は国民のための学術コンサルタントとしての初仕事をした。
1年以上審議した上で、代理懐胎は原則禁止、ただし試行的な実施は認める、分娩(ぶんべん)者を母とするルールは変更しないという結論を出した。
私は、この問題に関する厚生労働省の「専門委員会」(平成12年)、同「部会」(平成15年)以来ずっと審議に参加してきたが、「代理懐胎は人間の本性に反するから全面禁止」というような理論的な断定を下すことは避けるべきであると思う。代理懐胎した人の実情も調べなければ判断は下せない。

